December 03, 2013 22:24

「太陽の馬」 落合信彦

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オリジナルは1995年発刊。
俺がこの本を読んだのは、中学2年〜3年の頃だったので、
1997年頃だったと思う。
今回、16年ぶりくらいに読んだ。

******

この本のタイトルと表紙は強烈に覚えていたが、
その内容は殆ど覚えていなかった。

唯一強く印象に残っていたのは、
主人公の矢島健二が、自分の通う大学の教師と道端で話をしているところ。
そして、矢島が小さい頃からお世話になったヤクザの親分が、
最後は自分のかかった病気に苦しみながらも、
モルヒネなど打たずに、その痛さに耐えながら、
死んで行くところ。
そして、「偉大な人間は、人にしてもらった恩は決して忘れないが、
自分が人にしてあげた事は、全て忘れる。」というくだり。

それらを、どの小説のことかはすっかり忘れていたが、
落合の小説でそんな内容があった、ということは頭の中に残っていた。
そして今回この小説を読んで、
「ああ、この小説の話だったのか」と思い出した、という訳。

*****

主人公の矢島健二は、幼い頃に両親をなくすも、
その後、ヤクザの親分に拾われ、その中でしっかりと育って行く。
いずれ大学を出た後は組を率いて行くと信じ込んでいたが、
親分の頼みもあって、帝商物産という商社に入社し、
そこで数年力を付けた後は、独立し、
最終的には全米3位に位置するコングロマリットを作り上げる。

しかしながら、その登場人物たちの人生は、
余りにもストイックで、ハードボイルドで、むしろ笑えてくる。
矢島健二は、最愛の女性エレーヌと結婚する直前に、
彼女が交通事故に合い亡くなってしまう。
矢島健二と幼なじみの夕子は、
アメリカに留学して最愛の男性と愛し合うも、
彼は実はマフィアのドンの息子で、
対抗相手を殺した罪により、逃れる為に国外へ逃亡し、
二度と夕子の前に現れない。
そして最後は、相手の抗争の為に、殺害される。

矢島を育てた商社の上司、飯島は、
自らがまだ若い頃、ブラジル支店長に任命されている頃、
翌日は数年かけて温めてきたプロジェクトの合否が決まるという日の晩に、
日本にいる一人息子が交通事故で危篤との知らせが、
同じく日本で待っている妻より連絡が入り、
今から日本へ飛んでも間に合わないと判断した彼は、
結局日本へ帰らない。
その代わり、それから数十年間、彼は、
東京の片隅にアパートを借り続け、
そこに5歳の息子が好きだったプラレールを設置して、
そこで夕焼け小焼けを歌いながら、涙を流す。

どんだけハードボイルドやねん、と突っ込みどころ満載だが、
ここはやはり落合節。
彼の世界に、「甘え」というものは容赦されない。

*****

こんな人間の書く小説やエッセイを読み続けて中学、高校の思春期を過ごした自分は、
やはり、彼の小説を読むと、どこか安心してしまう。
そして、結局は、
彼の描く小説の主人公の様な生き方を、心のどこかで願っているんだな、
と気づいてしまう。

しかし、自分は彼の小説の主人公たちの様に、
ビジネスは成功するが、最愛の人とは結ばれない、
または、その幸せが途中で終わってしまう、というのは絶対に嫌。

どこか落合は、最愛の人と結ばれないことが、
人生の美徳と思っているような気がしてならない。

2013/12/3 22:24






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