September 07, 2013 15:45

「狼たちの世界」 落合信彦

04001474


1986年の作品。
前回レビューを書いた、
「ただ栄光のためでなく」
「男たちの伝説」
に続く3作目。

だが、今回の舞台は、全二作と異なり、
アメリカ、そしてソ連が舞台。
アメリカのCIA, FBI, DIA,
そしてソ連のKGBのエージェントたちが物語の主人公となる。

そこで、主要人物として出てくるのが、
今回初めて出る日本人元商社マンの西條。
彼は自分の務めた商社でベイルート支店に在籍中に、会社に見切りを付け、
仕事で関わったアラブ人と組んで自分で会社を興し、
アメリカで民間最大手の情報を扱う会社を仕立てる。

その後、2作目で少しだけ出てきた玉城という騙し人の男が、
最終的にKGBの凄腕エージェントを騙しにかかり、
SDI(スターウォーズ計画)を絡ませた、CIAが組んだシナリオを
遂行させる、という話。

個人的には、前作の仁科がお気に入りの人物なので、
彼が少しだけ出てきたのが嬉しかった。
(彼は、部下のウェスと共に、NYの郊外に集まったマフィアのドンたちを、
一度に暗殺する仕事を引き受ける。)


とにかく、最初はCIA, FBI, DIA, KGBの人間たちの名前が
どんどん出てくるので、途中で混乱して、
小説の半ばはちょっと意味が分からなかった。
またもう一回読み直せば、多分やっと腑に落ちると思う。

*****

彼の作品自体は良いが、
解説者のコメントがいただけない。

「落合氏の作品を好んで読む読者は、海外志向で世界の情報に敏感な者が多い」というくだりは良いが、

「日本には、『私は日本に生まれて本当に幸せだ。毎年、桜が咲く季節を楽しみにしている』という方がテレビのどこかしこでコメントをしている光景を見るが、恐らく、こういう方はアメリカの大荒野にて感じる壮大な気持ちや、メリーランド州の州花の美しさは一生知らずに死んで行くのだろう。そしてそういった方は、落合氏の作品を読んでも実感が湧かず、楽しめないと思う」のような事を書いている。

まるで、落合的な海外志向、日本人の内向的なところをバカにし、
海外でバリバリやって行くのが真の男さ、
という考えだけを推奨し、
日本の中の幸せだけを感じて慎ましく生きている人たちを、
明らかに軽く見ているのが分かる。

(そして結局、上のコメントは、アメリカ内のそれしか言っていないので、視点が日本の中からアメリカの中に変わっただけで、余り違いが無い。)

そういう、「俺の考えの方がお前より優れてるぜ」的なメンタリティーで物事を見ること自体が、視野が狭いんだよ、と言いたくなる。
そして、彼の解説がこの本の一番最後に付く事で、
この小説の価値を下げている気がする。

*****

小説自体は、ちょっと疲れますが、なかなか面白いです。

2013/9/7 15:25



追記:
ちなみに、小説の中に、FBIのエージェントでダルスィー・パーマーという名の、
超美人だが、マフィアにボロボロにされて死んで行った姉の復讐を遂げるために、
敢えて高級娼婦としてカバーになり、
マフィアの親玉に近づき、
最終的に、目的の人物を自分の手で殺す、という女性が出て来る。

彼女は、この小説の主人公の西條と親しくなり、
彼らは、彼女の計画が無事に終われば、ゼロから人生をやり直そう、
と約束するのだが、
最終的に彼女は、相手を殺すと共に、相手の投げたナイフに胸を刺されて、
そのまま死んでしまう。

最後、彼女が死に絶える前に、
西條に電話をしたその会話が、最後となる。

何もそこまでせずに、
せめてそこくらいはハッピーエンドにしてあげれば良いのに、
あくまでも男のハードボイルドな世界に拘る落合。

妻からすると、そういうところが客観的に見て
何とも面白いそうです。






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