December 23, 2012 15:52

「現実を視よ」by 柳井 正

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PHP研究所より2012/10/04に発行。

*****

今までの柳井氏の本が、
ユニクロを含めたファーストリテイリング、
自分の会社の経営の軌跡にフォーカスを当てていたのに対して、
この本では、柳井氏が現在思う、
日本の国、政治、人々の考えに対して、
自分の考えを記したもの。



彼は、この本の半分ほどを使って、
今の政治家、官僚に対しての
批判をするが、
そこに書かれていることは、
どれも、「当たり前」のこと。

つまり、政治家や官僚は、
国民の代表であり、
国民に仕えるものであることから、
毎年赤字になるのであれば、
使うお金を減らし、
収入の中で、やりくりをして行く、
それにより、国に貢献して行く、
という事を真っ先に考える立場であるのに、
それを、全くしていないこと。

一企業は、
必死に人員削減をしたり、
給与カットなどを行い、
何とか利益を作り出そうと、誰もが努力をしているのに対して、
日本国の政治家は、
そういった考えではいないこと。
何か失敗を犯しても、
捕まることは無いし、
国民の税金を無駄に使おうと、
それにより、罪に問われることはないこと。

そういったことが、
ストレートに書かれている。

彼がこの本で言うこれらの意見は、
上に書いた様に、全ては、
普通に考えたら、「当たり前」のことである。

しかし、それを、日本の政治家や官僚は出来ていないし、
しようとしない。
しようとする誠意も見られない。
だからこそ、怒りが生まれ、
不信感が生まれ、
どうしようもないやり切れなさが残る。

*****


また彼は、
現在の日本人の精神面、
考え方に関しても、警鐘を鳴らしている。


日本では、「就職」というよりも、
「就社」にフォーカスが置かれ、
一度、有名大企業の社員や、官僚になってしまえば、
そこから安泰した生活が始まるという、
「自分の所属するグループ」にあぐらをかき、
誇りを感じる精神が、
いつの間にか人々の間に染み付いていること。

よって、海外では、
ビジネスマンに会う際に、
「あなたは何の仕事をしていますか?」と聴くと、
誰もが、
「私は経理をしています」
「私は営業をしています」
と、自らの仕事内容に関して答えるのに対して、
日本のビジネスマンは、
「私は◯◯で働いています」
「私は◯◯の社員です」
と、自らの会社の名前を名乗る、と。
つまり、自らが「どこに属すか」が
「立場」となり、
ステータスとなっている。
決して、自らを、
独立した、一人の仕事人として見なしていない、と。



また、
本来、資本主義の考えでは、
人間は、企業に最初は勤めようとも、
いずれは自ら起業をする志を持つもので、
企業に勤める中で、
そこで自ら稼いで行くためのノウハウを
身につけるはずが、
今の国民の多くが、一生そこの会社にしがみついて、
「サラリーマン」の状態で、
毎月給料を「もらう」考えになっていること。

そして、毎月の給料から、
税金も全て自動的に天引きされる形になっているので、
一体自分が、毎月、毎年、
いくらの金額を、国に納めているのかを、
実感することがない。
そして、その税金を国がどう使うかに対しても、
余り感心がない。


政治家は政治家で、
そうやって国民から絞り上げた税金を、
無駄金に使う。
そして、その使い道を明確に示さないまま、
「とにかく増税すること」だけにフォーカスを置き、
政治活動を続ける。

その現状に、柳井氏は嘆き、
そして、この本を読んだ自分も、
自らの中に溜めていた、
政治家や官僚に対する怒りが蘇って来る。

*****

柳井氏はこの本でこう言う。

「今の日本人の生活レベルは、
決して裕福ではない。
むしろ、他のアジア諸国よりもずっと下である。
平均的な日本人は、
自分たちの生活レベルを、世界的に見て、
上の中くらいに思っているが、
実際は、中の下ほどである。
毎月の給料を気にして、
コーヒー一杯買うことを迷う私たちの生活レベルは、
世界の他の国々と比べて、
確実に低い」と。

(本書には、
世界の名目GDPの推移が記されたグラフが載っているが、
1990年から2011年にかけて、
USA、EU、中国、アジア新興国は、
確実に右肩上がりなのに対して、
日本だけが、1995年以降、
ガクッと下がり、
下に位置づけている。)



また、柳井氏は、
現在の日本、
「希望が持てない」日本を嘆く。

バブルの崩壊を後に、
「失われた20年」の言葉ばかりが先走り、
経済、及び政治の方向性に希望を持てない。

世間では、
「がんばらない」
「求めない」生き方が流行り、
「欲を持つこと」を抑えようとする考えが主流となる。

まるで、今活気のない日本人に、
ますます、「現状維持」を促す様に。



しかし、現状維持は、
衰退と一緒。
人間は、昨日よりも良い生活をしたいと思うからこそ、
頑張ることができる。
その資本主義の本当の精神を忘れて、
「元気のない日本」を、「ますます元気のない日本」にしようと、
世間は動く。


*****


柳井氏は言う。
アジアに行くと、そのパワーが違う、と。
実際、自分がアジア諸国へ足を運んだ際にも、
日本とは違う、その漲るようなパワーの違いを、
確実に感じる。


日本は島国であり、
結局は、「日本」という島国以外の国を、
意識せずに生きて行くことが出来る。
だから、日本内でしか「常識」でしかない、
政治、経済、マスコミなどを、
「おかしい」と思わない。


柳井氏は、本の最後でこう括る。

「志を持て」と。
志、希望を持つことが、
人間が自らの中から力を生み出す一番の源であり、
自らの可能性を信じろと。
そして、日本という国の中にそれを見いだせないのならば、
海外に出て行け、と。


*****


人間は、
狭い部屋の中で、
外界と接せず、
自分の好きなことばかりしていると、
やがて、視野が狭くなり、
いざ外に出た時に、
その中で生き残って行く力はなくなる。

今の日本はまさにそれであり、
柳井氏を始め、
現在の日本、日本人の在りたちに対して
危機感を感じる多くの人間が、
「日本という狭い部屋を出ろ」という。

*****


このような意見を読んだ後、
そこからどうするかは、自分次第である。

柳井氏たちの意見を聴いて、
外に出るもよし。

日本の政治のやり方に対して、
意義を唱えるも良し。

「何だかんだ言ったって、
これが『日本』という国のルールであり、
その中でうまく生き残って行く為に、
俺は官僚になり、甘い汁を吸う」でも良し。

または逆に、官僚になって、
日本を良い方向へ変えようとするも良し。

大企業の一員になって、
その特権を味わうも良し。
起業をするも良し。
サラリーマン根性にしがみつくも良し。




結局、人間の生き方は、
その人間が決めるものであり、
「価値観」は、究極的には、
人には押し付けられない。

ただ、1つ明確に言えるのは、
他人を含め、
自分以外を変えようとすることは、
かなりの労力がいるのにも関わらず、
実際、その「自分意外の何か(他人、国を含む)」は、
その「何か」が根本的に変わろうと
自ら本気で思わない限りは、
何も変わらないのに対して、
「自分」という一人の人間は、
自分次第で、
いくらでも変えられるということ。


よって、この国の風習や文化、
成り立ちに怒りを感じ、
疑問を感じ、
不甲斐なさを感じるのであれば、
その「国」を変えようとするよりも、
自らが住む国を変えたり、
仕事をする場所を変えたり、
付き合う人を変えた方が、
効率が良い。


*****


どう考えるかは個人次第。


結論としては、
この本を読んで、
日本の現状や政治家、および現在の日本人に対して、
危機感が生まれ、
何かを感じることは、間違いない。


2012/12/23 16:26









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