August 30, 2012 19:34
「日本は財政危機ではない!」by 高橋洋一
7月末か8月の頭頃に読み終わる。
講談社より(2008/10/10)刊行。
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著者の高橋洋一氏は、
元財務官僚であり、現在は経済学者。
自分の経験を生かし、
日本の政治の裏を書いて行く。
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この本は今から約四年前の出版だが、
政府の増税問題に関して触れている。
政府は、「増税が絶対的」との方向性で話を進めて行く。
「日本の財政問題を解決する方法は、増税しかない」と、
マスコミや政府御用達経済学者を使って、
世の中を洗脳して行く。
そして、増税に反対する人間を、
「端から財政再建を放棄している」かの様な言い方をする。
よって、
「増税に反対するアゲ潮派=財政政権放棄派」VS「増税賛成派=財政再建派」
の様な縮図が、マスコミの記事によって世の中に出回り、
それが国民の無意識下にインプットされる。
そもそも政府は、
増税をする事しか頭になく、
それが更なる不況に繋がる事を知っている。
しかしそれでも、増税を行おうとするのは、
財務省は本気で、
「経済成長率が上がれば、財政再建できなくなる」
と考えていることが理由として挙げられる。
その理論は以下の通り。
「成長率が上がると、それに伴い金利も上がる。
そのため、利払いがかさんで財政再建が遠のく。」
著者曰く、
確かに2、3年の短いスパンであれば、そのよう現象は起こり得る。
経済成長が税収に繋がるまでは、しばしの時を要するから。
一方、金利は先行して上昇する。その結果、一時的に財政が逆に圧迫される可能性がある。
しかしそれはあくまでも一時的な現象に過ぎず、
やがて金利の上昇は頭打ちになり、
税収の自然増がジワジワと始まる。
よって、「経済成長こそ財政再建への近道」とは、経済学の常識である、と。
それにも関わらず財務省が経済成長に対して否定的なのは、
彼らが近視眼的な視野と、
強固な「財政原理主義」を持つからだという。
財務官僚の頭を支配しているのは、
目先の財政収支の均衡だけだと、著者は言う。
そして、財務省としては財政再建さえなればどの道でも構わない中、
財政収支の均衡をはかるために最も確実で手っ取り早いのが、
「増税」である、と。
責任問題から見ても増税の方が心理的に楽でもある。
経済成長によって、自然に税収が増えて行くと、
政府に対して歳出を増やせという声も大きくなる。
歳出カットは財務省の責任なので、
上手く出来なければ財務再建が出来ないだけでなく、
財務省への批判も高まる。
それに対して増税は、
政治家の責任。
増税で国民から強い風圧を受けるのは政治家である(つまり今この役目を負っているのは野田氏とそのまわりの人間)。
増税で国民に負担を強いている時には、政治家も各省庁も、
歳出を増やせとは言いにくい。
だから財務省は、財政タカ派の国会議員、
マスコミ、御用達学者などを操って、
財政危機を強調し、増税を叫ぶ、
と著者は語る。
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上に書いた様に、
マスコミの報道を自分たちの都合の良い様に操っているのは、
財務省である。
霞ヶ関の役人にとって、マスコミを意のままに操るのは、朝飯前である、と。
そもそも官庁詰めの記者と役人は一体化しており、
記者は身内のようなものだ、と。
「記者クラブ制」といい、
各新聞社の記者には、
各省庁の建物の一室があてがわれ、
そこを拠点に記者たちは担当省庁の取材を行っている。
記者クラブに属する記者たちの特権は、
アポイント無しでも、役所内の部屋を訪ねて、
新聞ネタをもらえること。
よって、官庁詰めの記者たちは、
部屋も情報も、全て提供され、
一緒に生活をしているから、当然「仲間」となる。
その結果、役所に対して批判的な記事は書けなくなりばかりか、
自ら役所の代弁を買って出る記者も沢山出て来る、と。
また、マスコミだけではなく、
役所の御用達学者たちや有職者と呼ばれる人々も、
役所の後押しをする。
仮に、新聞上である経済学者が、
役所の政策を批判する記事を載せたとする。
すると、その日のうちに役所から連絡が来て、
「先生のペーパーをについてご説明をしたい」
と”提案”が入る。
そして、膨大な国家予算を使って役所が集めたデータを使い、
その学者のデータの過ちを指摘する。
その後、
「先生のデータに今後過ちがないよう、
私どもにおっしゃっていただければ、いつでもデータをお持ちしますよ」と唆され、
学者にとっても大きなメリットとなるその提案を受け入れる。
その結果、徐々に役所に取り込まれ、
役所に甘い学者になって行く、と。
そして、やがて審議会からお誘いがかかる。
審議会の委員に名を連ねることは学者にとってもステータスであり、名誉。
結果、完全に役所に取り込まれ、
一人の御用達学者のできあがり、と。
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そもそも、財務省は常に、
増税を必要とする理由の第一として、
日本国の債務の大きさを訴える。
しかしながら、
債務だけを強調し、
政府が保有する莫大な資産については、一切触れない。
また、通常政府は、
日本国を大きな「家庭」として例え話を持ち出し、
「日本という家族は、◯◯円もの借金を抱えている」と言う。
確かに、通常借金を抱える家族は、
決して良くない状態にあると言えるので、
この例えは、国民を「日本はヤバいんだ」という考えに導く。
しかしながら、なぜ企業に捉えないのか。
企業であれば、借金をしているのは通常であり、
それに対して資産と照らし合わせて、全体のやりくりをする。
そして、企業は内部保留や土地などの資産を保有しているので、
必ずしも負債の総額がそのまま債務とはならない。
そうした金融資産を差し引いた数字が、「純債務」である。
しかし財務省が、
資産に関しては一切触れず、
粗債務だけをを強調するのは、
「保有している資産は手放す気がありません」
と言っている事と等しい、と。
そしてもう一つ。
2002年4月に、アメリカの国債格付け会社によって、
日本国債の格付けが引き下げられたとき。
慌てた財務省は、
「日本は世界最大の貯蓄超過国であり、
国債は殆ど国内で消化されている。
また経済収支黒字国であり、
外貨準備も世界最高である」との意見書を、
格付け会社に送りつけた、と。
つまり、
「純債務で見れば日本は財政危機ではない。
よって、国債の格付けを下げるのはおかしい」
と主張した、ということ。
このように、
海外向けのアナウンスでは、国内向けとは全く逆の事を言っている、ということ。
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まとめとして著者は、
日本国は莫大な資産を抱えており、
それをきちんと負債の支払いに当てれば、
増税をするよりもよっぽど大きな効果が上げられる、
ということを説く。
しかし、日本政府にそれを期待することは、
天が落ちてくるよりも難しい。
2012/8/30 19:13