August 21, 2012 20:28

「小説サブプライム 世界を破滅させた人間たち」by 落合信彦

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落合信彦の小説です。
数年ぶりに読みました。

恐らく、前回読んだ彼の作品(小説)は、
「虎を鎖でつなげ」だと思います。
2005年に、先輩のOさんがアメリカに来た際に、
日本で買って来てもらいました。

この作品は、
集英社より2009/6/26に刊行。


*****


久々に彼の小説を読みましたが、
非常に面白かったです。

彼の作品には、必ずと言っていい程、
日本人の主人公が出て来ます。
その主人公が、
アメリカ人やロシア人、中国人などを相手に、
バリバリと世界で活躍する、
というのが彼の作品のスタイルです。

俺が彼の小説を初めて読んだのは、
中学二年生の夏、
「男たちの伝説」が初めてでした。

それ以来、随分と彼の作品は読みましたが、
大分ご無沙汰しておりました。


*****


久々に読む彼の小説は非常にテンポが良く、
すいすいと読み進めました。

今回の小説の舞台は、
1990年代の日本でのバブル最盛期から、
2001年9月11日のアメリカNYでのテロ、
そして、2008年のサブプライムローンによる、
リーマンショックまでを網羅した内容となっています。

丁度日本のバブル時代に19歳の東大学生だったという設定の主人公、
荒木大河が、
その後、NYに渡り、
1年ゴールドマン・サックスで働いた後に、
自分の会社を創設して、
元財務省国際部部長のジョニー・クレイや、
元FBI NY支局の犯罪部部長の凄腕、アーロン・パッカードなどを筆頭に、
アメリカの超エリートたちを引き抜き、
わずか30歳にして、NYのWall Streetを舞台に、
ビジネスと人生を謳歌するという、
凄まじいスケールの本です。


もちろん彼は、
19歳まではアメリカに渡ったこともないのですが、
それまでに東大に入る為に得た速読の技と、
不幸な家庭に生まれたことをバネに、
絶対に負けたくないとする逆境に立ち向かう精神を元に、
アメリカに渡ってからも、
1年で英語をマスターし、
その後は、アメリカ人の世界の中で、
バリバリとやって行きます。



実際、それは非常に難しいだろうと自分の実体験から思いますが、
やはりそこは落合氏の小説。
主人公は何でもありです。

しかし、彼の描く主人公像は毎回とてもカッコ良く、
それらの主人公たちを手本に生きようとすると、
自然と、

「世界の言語は英語を筆頭に数カ国後が堪能」
「『日本人』ということを全く引け目に感じさせないバイタリティ」
「世界中どんな世界でもやって行ける強靭な体力と頭脳」

を兼ね備えた人物を目指すことになります。





この小説を読みながら、
ふと思いましたが、
俺はもしかして、
中学二年の頃に、彼の小説にハマってから、
どこか、心の奥底で、
彼の小説に出て来る主人公のようになりたい、
という強い野望を、持ったのかもしれない、
と思いました。

なぜなら、俺が究極的に目指し、
そうであったら、本望である、という人物像とは、
結局、彼の描く小説の主人公たちに近いからです。



******



また、
今回の小説の舞台は金融世界がメインとなりますが、
この小説を最初に読み始めた去年辺りは、
正直言って、この小説に出て来る単語の意味が、
全く分からず、
それもあり、結局読むことを辞めていました。

それは、
デリバティブ、
CDS(クレディット・ディフォルト・スワップ)
レバレッジ、
など。

それらの、金融の知識を、
ここ数ヶ月は別の本を読んで蓄えていましたが、
そのおかげで、
今回この本をお盆休みに地元に帰る途中で読んだ際には、
非常にスラスラと読めました。



*****



ちなみに、主人公の荒木が19歳にしてアメリカに渡り、
そこでいきなりゴールドマンサックスに入り、
その後自分の会社を創立することができたのは、
彼がバイトをしていたバーの店長、
山中という男のおかげなのですが、
彼とのやり取りには、かなり感動し、
目頭を熱くしました。
久々に、小説を読んでいて、
目に涙が溜まりました。



*****



この作品の続編も出ているので、
早速読んでみようと思います。


2012/8/21 20:45






追記:

この小説の内容に対して、
唯一ケチをつけるとすれば、
主人公の荒木がアメリカ人を相手に英語で話すシーンは、
全て英語の台詞を下地に書かれているので、
英語がわかればわかる程、面白い、ということに対して、

日本語での、恋人みゆきとの会話が、
余りにもキザすぎる、ということ。

恐らく、著者は既に70歳近くになり、
その年代のギャップもあるのだろうが、
そこが少し気になった。



しかし、上に書いた様に、
落合氏の小説は、
英語がわかる程、
または、その小説の舞台の歴史を知れば知る程、
その内容は、実際のノンフィクションを元に書かれているので、
非常に面白い。

例えば、出て来る登場人物は、
主人公とその周りにいる人間以外は、
ほぼすべてが実在の人物。

(今回はもちろん、元FRB議長のアラン・グリーンスパンや
元CFTC委員長のブルックスレイ・ボーン、
また、エンロンや、リーマン・ブラザースの重役たちが出て来る。)


そして同時に、
主人公がアメリカ人を相手にやり取りをするその台詞の内容は、
恐らく著者が英語で全てのやり取りを考えた後に、
日本語にそのまま直訳した様な内容なので、
日本語だけで読むと、少し違和感のある内容と映るが、
そのやり取りを、英語に同時に訳して、
頭の中で、その人物たちの会話を映画のように描いて読むと、
非常にリアル感が出て来て、面白い。



俺が最初に彼の小説を読んだ13歳の頃は、
もちろんそんなことはできるはずがなかったが、
今では、それが出来る様になったので、
また別の視点から、彼の作品を楽しむことができた。



また、彼は上のスタイルで会話を書くため、
所々で、英語をそのままカタカナで書いた台詞が出て来る。
そのニュアンスも非常にリアルで、
「実際にそういう言い方するよな」という感じなので、
読んでいて非常に面白い。





落合氏は、自分がアメリカに大学から渡り、
そこで自分の人生を180度変えたので、
完全にアメリカびいきの内容となるが、
そこが、また一つの良さだと思う。


今は、アメリカもサブプライムローンの破綻以降、
完全に勢いを無くし、
アメリカ=No.1の時代は完全に終わってしまったこともあり、

また、インターネットも普及し、
アメリカ以外の外国の情報も沢山入って来たり、
また、アジアなどの新興国がより興味を惹く状態にあったりで、
アメリカを純粋に、
魅力的な世界と描く人々は、随分と減ったと思うが、

それでも落合氏は、
「やっぱりアメリカが一番だ」
的なスタイルでモノを書くので、
読んでいて、非常に楽しい。

それは、俺がやっぱり、
自分が18歳から24歳までを過ごした国に、
思い入れがあるからだと思う。








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