July 29, 2012 19:06

「正義という名の洗脳」by 苫米地英人

02

最近苫米地氏の本にも飽きて来ました。
そりゃあ、3月くらいからずーっと彼の著作ばかり読んでいたら、
飽きるに決まっています。

しかし、彼の著作は、
毎回50%は同じことを言っているとはいえ、
同時に、毎回新しいアイディアが書かれているので、
「ほう、なるほど」と、
目を開かされるところもあり、
それを求めて、やっぱり読んでしまいます。

*****

同時に、妻は俺が彼の著作に洗脳されないか心配していて、
俺も、「大丈夫だよ」と言っていますが、
やはり、一人の作者の著作ばかりを続けて読むと、
その人の「考え・主張」を、
知らず知らずのうちに、素直に受け入れている自分がいます。

よって、例えば苫米地氏は、
世の中に存在する「常識」たるものを、
疑ってかかり、
なぜそれがそこに存在するかを読者に考えさせるために、
その「常識」の裏をかいていくわけですが、
そういう本ばかり読んでいると、
毎朝新聞を読んだり、ニュースをネットで読む度に、
「本当かよ?」
「このニュースを報道している人物の裏にはこういう魂胆があるんだろう」
と、裏ばかり読んでしまう傾向が出て来ます。

まあ、俺は基本的に、
昔から何でも素直に信じてしまうタイプだったので、
それ位でバランスが取れて丁度いいのかもしれませんが、
しかしながら、
「一人の著作ばかり読み続ける」ということも、
その「考え」=「その作者が持つ”常識”」
に自分をハマらせることなので、

そこでは、

「全く違う視点、または、全く逆の視点を持つ作家の意見も読む」
「自分を逆の視点から批判、注意をしてくれる、
信頼出来る存在を持つ(自分の場合は妻です)」

ということが、必要になってきます。
(俺はそういうわけで、何かにハマると、
すぐに、それ一辺倒になってしまうので、
それに対して、
「それも良いけど、こういう見方もありますよ。
また視野が狭くなっているよ」
と賢く諭してくれるのが、僕の嫁さんなわけです。
そういうわけで、彼女のことをいつも尊敬しているし、
いつも感謝をしています。)


*****


そういうわけで、
前置きが長くなりましたが、
苫米地氏の比較的最新作。
大和書房より2012/7/1初版発行。
図書館でリクエストしてやっと来ました。


*****


この本は、
以前に読んだ
「あなたは常識に洗脳されている」
にスタンスが似ています。

要するに、

「この世の中は、
『正義』という名のもとに、
『この世には絶対的に正しい一つの考えがある』
ということを、利権を狙った権力者が国民に植え付け、
それにより、国民を操っている」

ということを指摘した本です。

そして、その『正義』を作り出す真の理由は、
権力であり、
お金である、
ということです。


*****


例えば、世界のジャイアンことアメリカは、
今では何にでも首を突っ込んで来ますが、
彼らも、様々な手段を使って、
『正義』たるものを理由に、
世界の色んなことに手を突っ込んで来ます。

(これらはアメリカだけの力ではありませんが、
IMF(国際通貨基金)や
BIS(国際決済銀行)のやっていることは、
内部干渉に変わりない、と苫米地氏は指摘します。)

そして、アメリカでの『正義』のジャッジの基準は、
お金でしかない、と。


(ちなみに、日本でいう「正義」は、
英語では"Justice"ですが、
これは本当は、「公平、フェアであること」
という意味である。

よって、ハーバード大学マイケルサンデル教授の
『これからの「正義」の話をしよう』
"Justice : What's the Right Thing to Do?"
の題名の翻訳は、ちょっとずれている、と言っています。)


*****



彼は他にも、
日本国内の「正義」=「常識」
の批判をします。


・制服、及びランドセルは、
それらを作る会社へ利益が流れる仕組みでしかない。
(戦後は国民にお金がなく、着るものが無い人もいたので、
その為に制服ができたが、
今では、制服の方が一般の洋服よりも高いのに、
未だにその制度が廃止されない、と。)



・学校での「掃除」は、
「掃除をしっかりすると、人格が上がる」
「仕事ができるようになる」
と教えられるが、
結局は、掃除業者を雇うよりも、
学生に働かせた方がタダなので、
そうさせているにすぎない。

また、「自分で汚したところは、自分で綺麗にする」
という理由も挙げられるが、
それならば、「自分で汚したところを、そのまま汚いままで放置する」
という選択肢も、学生に選ばせなければならない、と。

(ちなみに、アメリカでは小学校から、
掃除業者が雇われるので、
アメリカの学生は学校の掃除をする習慣がありませんが、
これもやはり問題。
なぜかというと、
「汚したところを自分で掃除することの大変さ」
を知らないから、
アメリカ人は、公共の場の使い方が、本当に汚い。
10年前に留学をしたとき、
学校や寮のトイレの汚さには、
本当に辟易した。
なので、俺は、掃除をさせることには、
賛成です。
日本人は、掃除をする習慣をつけられるから、
その結果、真面目にもなり、
仕事に対する姿勢も、アメリカ人のそれよりも、
より「愚直」になる傾向がある、という利点もあると思う。
愚直すぎるところもあると思うが。)



・日本赤十字社は、
国民の血を、「献血」という名の下に
無料で採集し、
それを、病院に売っている。
それは、日本の血液事業の独占にならない、と。



・日本の相撲の世界は、
日本相撲協会に権力が集中している。
2011年の春場所が、力士による八百長問題で中止されたが、
そもそも、八百長は昔から続く相撲世界の伝統であるし、
また、例えオリンピックや野球で、
選手が八百長(ドーピングなど)をしようが、
その選手は失格になっても、
オリンピックや野球自体は、中止にならない、と。

上の春場所中止の理由は、
利権を握る日本相撲協会の人間ではなく、
外部の人間が起こした八百長であったからこそ、
「お前ら、勝手に入って来るなよ」と、
その利権を日本相撲協会が示す為に、
中止にした、と。



・日本国内の新聞は、
テレビ局と全て繋がり、
そのメディアを支配しているのは、
電通である。

そして、その電通は、
GHQに支配されてできたので、
結局、日本国内の報道も、
全て裏で誰かの都合の良い様に操られている、と。

(彼はこの点は、『電通 洗脳広告代理店』で深く書いています。
それにしても、
彼はこんなに電通を批判して、
バッシングを受けないんでしょうか。


ちなみに、権力に反対する人間(ジャーナリストなど)は、
結局は、「権力」の持つパワーの強さを知っており、
だからこそ、存在する権力に反抗し、
それを覆すことに闘志を燃やす、
と指摘します。)



*****


と、
彼の他の本で触れられている内容も反復して出て来ますが、
こんな内容の本です。


*****


最後に。


苫米地氏の書く内容は、

小さい頃から、日本という国の在り方に疑問を抱かず、
世間で言われていることは当たり前、
という人にとっては、
「何を言っているんだ、コイツは」
という風に映ると思います。


それとは逆に、
世の中のことを、常に「それって本当なの?」
と観ている人間にとっては、
「そうそう、そうなんだよ」
と頷けるところも多いと思います。


なので、彼の著作に対するAmazonなどのレビューを観ると、
必ず、賛成派と反対派の二極に別れます。




彼の著作の内容を読むと、
自ら、「自分の頭で考える」
というクセが付きますが、
同時に、彼が本の中で推薦する、
「世の中の常識を疑って、それに逆らって生きる」
という生き方は、
その郷の中で働く者にとっては、
その郷のルールを外れることであり、
それは、同時に、
「賢くない生き方」でもあります。

(「賢くない」というか、
スニーキーじゃない、抜け目が無くない、
ということ。)



なので、一番いいのは、
彼の著作を読んで、
「なるほど、こういう考え方もあるのか」
と、自分の考え方を広げ、
その上で、
「でも、俺の場合は、どうするんだろう?」
と、自分なりの
「哲学、考え方、判断の基準」
を持つことが大事です。



そして、結局苫米地氏は、
そういうことを、読者に促したいのだと思います。


つまり、

「私の言っていることも、一つの意見にすぎませんよ。
大事なのは、自分の頭で考えることです。
そのためには、世の中に存在する、
「絶対的な正しい答え」=「正義」というものも、
その裏を知って、疑う必要があります。
その上で、自分にとっての「基準」を持つことが大事です」

と。

2012/7/29 8:27





追記:

と、ダラダラ書きましたが、
結局は、
「大量破壊兵器が存在する」との理由を元に、
イラクに攻撃をしかけたアメリカのように、
(そして、その侵攻の本当の理由は、
「石油」と「お金」であったように、)

自国の「正義」なるものを理由に、
他の国にまで攻め入ることは、間違いだ、と。

国が変わったり、
同じ国でも、土地が変わったりする中で、
そこに存在する「常識」や「文化」「ルール」は変わる。

それが人間というものの特質であり、
それをムリヤリに、
一つの「正義=利権」
にまとめようとするのは、
結局、ローマ帝国が統一されたり、
チンギスカンがアジアを占領したり、
徳川家康が天下を取った様に、
「自分が見える範囲の土地を、統一したい」
という、人間が持つ「権力」に対する欲でしかない、と。


その証拠に、
キリスト教も結局は、
イエスキリストが死んだ数百年も後に、
ローマ皇帝にとって有利なものだけを集めて、
作られたものにすぎない、と。



******




また、話は変わりますが、
彼は1ヶ月に300冊の本を読むことを推奨しています。

そんなにどうやって読むっちゅうねん、
という感じですが、
彼は、4分〜6分ほどで一冊の本が読めるそうです。

なので、1時間あれば10冊、
それを30日で300冊だとか。

しかし、一冊6分は流石に大変なので、
ちょっとハードルを下げて、
20分で一冊を読んで欲しい、といいます。

そして、一日にできれば3時間、
少なくとも1時間は最低、
本(活字)を読む習慣をつけ、
その中で、著者の主張に対して、
賛成、反対、または自分なりの意見を
頭の中で理論付けて考え、
そうやって論理的思考の訓練をすることで、
「IQを高める」ことが、
日本の教育に必要であると説きます。

彼がこの本で示すデータによると、
現在日本では、
一ヶ月に一冊も本を読まない人が、
全体の7割に及ぶとか。

つまり、日本国民の3割の人しか、
一ヶ月に一冊以上の本を読まない、ということ。


そして、今はブログが流行っていると言われるが、
実際に、文字だらけのブログは誰も読まなく、
映像や写真が沢山載っているものしか、
人気が出ない、と。

そして、文字のコミュニケーションである
ツイッターに関しても、
使っているのは30代から40代ということで、
20代以下の若者は、
「ツイッター」=「所詮140文字以内とはいえ、文字を使うので拒否」
ということで、ツイッターは使っていないそうな。

(確かに、最近はFacebookが流行っていますが、
あれは、完全に写真を載せて、
そこに一言付け加えるだけでいいので、
余り文章能力は問われません。
むしろ、Facebook上に
こういうブログ的な長い文章なり、
自分の長ったらしい哲学や、ビジネスプランを書いても、
それをしっかり読んで反論してくる人は少ないかもしれない。

まあしかし、
Facebookはもともと、
アメリカの同じ大学で本当に近しい友達どうしが
インフォメーションを共有するためにできたから、
今の「Facebook」の使い方
(=写真だけをアップして、遊ぶ方法)は、
それでいいと思うけれども。)


*****


それと、読書に話題を戻して。

読書に関する主張は、
昔からよくありますが、
俺は基本的に、
本を読もうが、読まなかろうが、
その人の勝手だと思います。

確かに、文字を読み、
自ら論理的思考を行い、
そして自分で文章を書き、アウトプットすることは、
頭を使うけれども、
それはそれで、個人の好き嫌いでいいと思います。


よく、日経新聞の朝刊の新刊広告で、
「できるビジネスマンになるには本を読め!
今はみんな本を読まないから、
あなたが本を月に一冊でも読む時点で、
キミは大半の日本人に勝つ!」
みたいなフレーズがありますが、
あれも、
「いやいや、それは違うでしょ」
と思います。


*****


まあ、色んな「正義」があるから、
仕方ないか。











*******************


補足:(2012/7/31)

MSNの「ぐっどうぃる博士の新感覚★芸能ニュース解説」
より、「正義」に関する面白い記事がありました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2012年1月27日
第12回 これも一種のジハード!?――紳助の擁護芸人や松ケン大河が叩かれる理由








モテの定理、9つの定理を経て、今度は渕上博士が芸能ニュースを使ってケーススタディ。紳助擁護で叩かれる吉本興業と所属芸人たち、「王家」呼びで非難集中のNHK大河。これらはこの国で起こるジハードである!?



登場人物

渕上(ふちがみ)賢太郎博士
モテモテアカデミー及び夢を叶えるアカデミー主宰。数学、生命科学、行動経済学の博士号を持ち、人の心の動きを論理的に解明する。最近の画一化しつつある世の中に少々危惧を抱く。

山田君 
博士を慕う冴えない32歳。博士の教えにより、彼女いない歴=年齢だったモテない人生に終止符を打った中堅IT企業のSE。
肝が小さすぎて何かをバッシングしたくてもせいぜい「Bad」ボタンを押すくらいしかできない。
 




山田君 腹が立って、腹が立って死にそうです!!!

博士 どうした? コンビニで、女性店員にお釣りの小銭を、上から落として渡されたか?


c2012 The Sankei Shimbun & Sankei  島田紳助さん(左)と吉本興業の大崎洋社長(右)
山田君 そうなんですよ。手に触れるのがそんなに嫌ですかね? 僕にだって人権がっ......て違いますよ!!吉本興業の社長が島田紳助を擁護してるんです!「紳助さんは家族」って、強引にでも復帰させようとしてるんでしょうか。超スーパー腹が立ちます!

博士 そんなに、腹立たしいか?

山田君 当たり前です!!ヤツは暴力団とつき合いがあったんでしょ?そのせいで自分から引退したのに、舌の根も乾かぬうちにテレビの世界に戻ってこようなんて、どうかしてるぜ!

博士 おっ、ブラマヨ吉田のギャグを使ってきたな。

山田君 ブラマヨはトークが面白いから応援してます。でもブラマヨがもし紳助擁護なんかしちゃったら、好感度下がりますね。


c2012 The Sankei Shimbun & Sankei  赤い眼帯姿でレッドカーペットに モントリオール映画祭の板尾創路
博士 ああ、吉本興業の社長だけでなく、紳助に対して「戻ってきてほしい」とか「尊敬する先輩」とか言った吉本芸人たちも軒並みネット上で叩かれているみたいだな。会社に言わされているのか本気で言ってるのか知らないが、個人の意見なんだから別にいいだろうと思うが。

山田君 まあそうなんですけど、視聴者としてはあんな奴を擁護するなんて許せないって思っちゃうんですよね。板尾創路なんて、もともとはネット上でも人気のある人だったのに、紳助を擁護したことで「板尾には失望した」とか「新作映画も見ない」とか言われてましたね。

博士 うむ。それは、いわゆるジハードだな。

山田君 ジ、ジハード!? 何を言い出すんですか?

博士 2008年ころ、たまたまPodcastで『宗教学6「戦争・正義・平和 -- -- 宗教多元社会の中で」』 というのを見つけて聴いてみた。宗教学者の小原克博が、学生向けの講義としてアップしている音声ファイルだ。
このシリーズが、マイケル・サンデルの"ハーバード白熱教室"くらい傑作だった。当時これを聞いていて、僕は宗教的な心の動きは日常の中で起きている、ということに気がついたんだ。

山田君 それが今回のテーマですか?

博士 そうだ。
小原克博によると、ジハードはイスラム教の言葉で、一般的に「聖戦」と訳される。この言葉を聞くと9.11テロを思い浮かべる人も多いだろうが、全く違う。ジハードには「大ジハード」と「小ジハード」があり、もともとは「大ジハード」が主だったらしい。

山田君 ちょっと何言ってるか分かんないです。

博士 そうだな。大ジハードというのは、イスラム法に従って、自分を完全に浄化する行動だ。欲を捨て、堕落せず、心を制御し、自分自身を完全なイスラム教徒にする行動と言って良い。断食のラマダーンなんかも大ジハードのひとつかもしれない。

山田君 お坊さんが「欲を捨てる」とか言ってるようなもんですか。


教義に従い自分自身を浄化する
博士 それは違う。仏教の「欲を捨てる」とは、苦しみから逃れるためのテクニックだが、ジハードはピュアなイスラム教徒になるという意味合いだと思う。

これが外に向かうと小ジハードになる。小ジハードとは、イスラム世界の中にイスラム的なものでないものがあれば、それを正し、イスラム世界を攻撃するものがあれば、そこから守り、排除するという行動だ。

現在一般に知られているジハードは、この小ジハードを指す。

ここで、注意しなくてはならないことは、イスラム教は多くの人が思っているほど好戦的な宗教ではないということだ。侵略のためのジハードや、利益を得るためのジハードなどは言葉としてありえない。

そういう意味では、キリスト教の聖戦とは全く違う。たとえば、アルカイダが9.11に起こした同時多発テロも、アメリカがイスラム世界の同胞を苦しめたり、堕落させたりしたと考えたアルカイダがそれを正したに過ぎない。

山田君 なるほど〜。大変勉強になりますが、そのジハードと吉本芸人はどう関係するんでしょう?はっ、まさか今回の騒ぎは、紳助に東京03を攻撃された人力舎によるジハードとか......!


投票期間:2012年1月6日〜13日 合計投票数:4,304       「紳助さん復帰」について調査したところ、約95%の人が反対という結果に
博士 そんなわけないだろう。そんな人力舎、ちょっとカッコいいじゃないか。
山田君が、島田紳助を擁護する人間を攻撃したのは、この小ジハードに似ていると僕は感じたんだ。

人は、何か信じるものがあって、それに同調するある程度の大きさの集団があると、自然とジハード的行為に向かいがちになるんじゃないかと思ったんだよ。

先ほどの島田紳助の件なら、暴力団と関わる芸能人は許せないという集団、もしくはもっとシンプルに島田紳助が大嫌いという集団が、暴力団と関わったことがあっても別にいいじゃん、紳助はすごいじゃんという考えに対して、ジハードを起こしているわけだ。

山田君 なるほど〜、それでジハードと。

博士 自分と違う考えを持つ人がいることを許せないんだな。だから、徹底して彼らを叩く。

他にも最近目についたのは、NHK大河ドラマ「平清盛」へのバッシングだ。平安末期の院政体制を指して「王家」と表現していることに非難が殺到している。


c2012 The Sankei Shimbun & Sankei  「平清盛」第4回「殿上の闇討ち」から。院の護衛のために結成された「北面の武士」を務める清盛(松山ケンイチ、左)と佐藤義清(藤木直人) 
山田君 ああ、確かにネット上では「画面が汚い」とかより、「王家」呼びの方がずっと大きな話題でしたね。抗議の電話をしよう、なんて言っている人もいましたし。

博士 「王」は皇帝より下位だから王家と呼ぶことは皇室を侮辱しているとか、「王家」という言い方は馴染みがないとか色々言われているが、要は韓国が日本の天皇のことを「日王」と呼んでいて、どうやらそこには日本を貶(けな)す意図があるらしいぞというのが、このバッシングの燃料だ。

山田君 ネット上には一部、韓国とつけば何でもNGという人たちがいますからねえ。

博士 彼らは自分の目に入るすべてのものの中から、「韓国」という要素を排除したい。そこでそれらを攻撃するわけだ。彼らは攻撃するのが好きなわけじゃなく、韓国的なもの、韓国が好きな人を排除せずにはいられないんだ。

山田君 ほほう、じゃあ博士が去年からよく言う紗栄子をバッシングする人たちなんかも......。

博士 そうだ。スポーツ選手と結婚しておきながら夫の健康管理もせずに華やかな仕事をして、離婚となれば高額の養育費を要求するような考えが許せない。Amazonで評価の★が1.5になっている彼女の本のレビュー欄は、まさにジハードの現場だな。

よくみると、Amazonで彼女を擁護する評価があれば、「このレビューは参考になりましたか?」に必死で「いいえ」を押しまくっている様子が分かる。完璧なまでの浄化だ。


c2012 The Sankei Shimbun & Sankei  沢尻エリカ
これは別にネット上だけのことじゃない。

例えば、沢尻エリカは舞台挨拶で不機嫌な態度を取ったことで、マスコミから叩かれた。芸能人としての未来を奪われるほど徹底的だったな。宣伝の場で不機嫌なんてありえない、そんな態度を取る人は排除しないといけないというわけだな。

芸能界にいるからには100%芸能界的な人でないといけない、これもある種のジハードだろう。

ここで念のためにいつも言っていることを言っておく。ここでは何が正しくて何が正しくないかの議論はしていない。沢尻エリカが間違っているかどうかなんてどうでも良い。人の心がどう動いているかだけに焦点をあてた話をしていることを覚えておいてくれ。

山田君 つまり、人の心は、皆イスラム教的な考えを持っているということですか?

博士 いや、ジハード、ジハードと言ってきたが、小原克博のPodcastを聴くと分かるのだが、「自分の考えをその"宗教"で満たし、それ以外の考えを排除する動き」は、キリスト教にもある。また、ナショナリズムの中にもある。

先ほどの「平清盛」へのバッシングも、歪んだナショナリズムが生み出した排除の動きと言えるかもしれない。グリーンピースやシーシェパードなんかもそうだ。

山田君 ジハードも人の考えの根本的な動きとして自然、ということですか?

博士 そうだ。時々賢いぞ!!


正義のためなら、何をしても許される!?
そんなわけで、ジハードと言い続けるのはイスラム教に対する誤解を生む可能性があるので、ここからは"浄化行動"と呼ぶことにする。この浄化行動に共通する恐ろしいのは、"何をしても正義の名のもとで正当化されてしまう"という点だ。

たとえば、万引きや飲酒運転などをtwitterでうかつにもつぶやいてしまったお馬鹿さんたちに対する浄化行動は凄かった。その人の個人情報を特定し、就職内定先に連絡をし、所属する大学からの退学を促す行動まで出ている。すごく宗教的な浄化行動だと思わないか?

山田君 確かに。浄化行動って怖いですね。何で人はそんなことをするんでしょう。

博士 生物学的視点でひとつの仮説をたてると、「自分が支持した考え」「自分が信じる価値観」というのは、生きる戦略そのものだからだ。生きる戦略というのは我々生き物にとってとても重要だ。その戦略を間違えると死んでしまうのだからな。で、我々人間はみんな、人生の中で「こうやって生きていくのが正しい」というものを学び、それを信じ、それに従って生きている。

そこに自分とは違う戦略を持つものが現れると、自分が信じるものが揺さぶられる。「お前の生き方は間違っている」とな。生き物としてとても重要な部分が揺さぶられるから、無意識のうちにそれを恐れ、排除したい、自分の方が正しいことを認めさせたい、そういう気持ちが働くんだ。そう僕は考えている。

人間とは、いったんある考えに染まり、その考えを支持すると、それ以外の考えを排除したくなる生き物なんだよ。

山田君 自分の考えと違うものを攻撃するわけですか!


異物は排除したくなる
博士 根っこにあるのはそういう意識だと思う。
ある意味、人間の免疫機能と似ているな。自分以外のモノ、すなわち"異物"を全力で排除しようとする。人間は基本的に自分とは違うものが怖いんだ。自分を破滅させるかもしれないからな。

テレビがよくネット上の人々に浄化行動を起こされているのは、テレビが彼らの信念と違う考えや主張を発し、なおかつ彼らの信じる世界を汚す力をもっているからだろうな。

山田君 じゃあ浄化行動はこれからもあらゆるところで起こり続けると。本能に備わってるんじゃしょうがないですよね。

博士 そうだな。だが、実は免疫機能にはトレランス(免疫寛容)という、簡単に言えば異物を許すというかスルーする機能もある。たとえば、食べ物は異物だけど、食べても免疫機能は働かないだろ? トレランスは重要な機能で、それが狂えば体調が悪くなる。アレルギーの主な原因のひとつがそれだ。だから本当は、何でもかんでも排除するのはよくないんだろうが......。

山田君 博士がそう教えてあげればいいじゃないですか。

博士 そんなことをしたら、今度は僕が浄化行動の対象になってしまうよ。



【今週の勝手アドバイス】
人は自分の支持した考えと違う価値観に出会うと、
それを排除したくなる生き物である




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
Archives
記事検索