June 15, 2012 22:38

"The Making of Pump" by Aerosmith

Aerosmith-The_Making_Of_Pump


Aerosmithのアルバム、
"Pump"のメイキングとドキュメンタリー映像。

殆ど、彼らの有りのままの姿を描いている。


俺がこのDVDを買ったのは、2002年の6月、
留学する一ヶ月前くらいだった。
その時は、正直、5人が何を言っているのか、
全く分からなかった。
(輸入版を買ったので、日本語字幕が付いていない。)

でも、その時は雰囲気で見ていた。

*****

それから10年が経ち、
久しぶりにまた観てみた。
今ではもちろん、彼らの言っていることは全部分かるが、
たまにスラングが飛び交いまくり、
何の話をしているかは分かるものの、
「へえ、そんな言い回しするんだ」というのも沢山出て来る。
特にSteven Tylerの口は相当悪い。

*****

俺の思い出は置いておいて、

非常に良いドキュメンタリーだと思う。

彼らが42歳前後の頃の様子、
1989年、バンクーバーのスタジオに籠り、
5人で喧嘩をし合いながら、丹念に作り込んだ汗と結晶の様子が、
ありありと伝わって来る。

*****

この映像を観ていて思うのは、
エアロスミスという5人は、
一つのアルバムを作るにも、相当のエネルギーを必要とするだろう、
ということ。

俺が好きなもう一つのアーティスト、
レニークラヴィッツの場合は、
彼は基本的に一人で音楽を作っているから、
そういう、「他人との葛藤、やり合い」は、
アルバムを作るにおいて無いと思う。
あくまで、「自分の日記」というか、
パーソナルな世界なんだと思う。


しかしエアロスミスの場合には、
5人がスタジオに入り、
デモテープを回しながら、適当に楽器を鳴らして、
そこから生まれて来た音をインスピレーションにして、
曲を一つずつ作って行くらしいから、
相当のエネルギーと労力がいる。

(言わば、アウトラインも何も決まっていないモノを、
5人でああでもないこうでもないと言いながら作り上げ、
それが、最終的には、プロデューサーの一言、
「良い曲だけど、売れないだろうからアルバムに入れない」
で、自分たちが作り上げた曲がおじゃんにされる。
そのことを考えると、居た堪れなくなる。)

実際に、このビデオの中で、
トムハミルトンやジョーペリーなどは言っている。

「それまで5人で何時間もかけて作った、
言わば自分たちの子供の様な一曲が、
プロデューサーの『ダメだ』の一言で、
没にされる。
その瞬間は、胸が引き裂かれる様な思いだよ。
大体、アルバムを作り終える頃には、
俺はブルース・フェアバーン(プロデューサーの名前)を憎んでいるんだ。
でも、アルバムが出てから3、4ヶ月もすると、
その怒りもどこかに消えて、
また彼に会いたいと思うんだよ」と。

*****

このビデオを見ると、また、
彼らの人間関係も見えてくる。


5人の内、
「ジョーイクレイマー←スティーブンタイラー←ジョーペリー」
の順で、力関係がある。

ジョーイが一番力が無く、
(スティーブンにいつも言い負かされ、煽てられ、コントロールされる)
そのスティーブンにも、
ジョーペリーは、自分勝手に文句を言う。
「Don't tell me what to do, I'm having fun!」と。

よって、スティーブンに言い負かされたジョーイは、
ちょっと泣きそうな顔でドラムを叩き、
完全にふてくされている。
その後、スティーブンは、「ジョーイ、すげえよ!俺と結婚してくれ!素晴らしいプレイだ!」
とおだてる。


そのスティーブンにジョーペリーが自分勝手な発言をし、
スティーブンタイラーがふてくされて、面白くなさそうな顔をして、
すねている。


そういう様子が、この映像にはありありと出ている。

(実際、その3人の関わり合いに対して、
ベースのトム・ハミルトンとギターのブラッド・ウィットフォードは、
その中に参加せずに、遠い所にいる。

トムハミルトンは、恐らくバンドの中で一番アタマが良いと思う。
常に他の4人のことを客観的に観ていて、
彼の発言も、非常に論理的で、
頭のいい喋り方をする。

ブラッドは、一人、
ちょっと違うところにいる。
とても良いギターのプレイをするけれど、
ジョーペリーの自分勝手なギターにかき消されるので、
世間からは余り注目されない。
でも、実は素晴らしいプレイをしている。

こういうのを観ると、
その人間の性格と、
人間関係の立ち位置というのは、
彼らが演奏する楽器にも、
しっかりと出るもんだな、と、
何だか感心させられる。)

*****

スティーブンタイラーは、
この中で言っているが、
16歳でドラッグを初めて、
このビデオが撮影された42歳の3年前、
つまり、39歳まで、ずっとドラッグ中毒だったらしい。

このインタビューの中で、彼のこの発言がウケる。

「人は、ドラッグをしていると、
精神年齢が成長しないらしい。
なぜって、脳が発達しないからな。

俺は、16歳でドラッグを始めて、
ついこの間、3年前に辞めたばかりだから、
俺の精神年齢は、
ええと、19歳か!?」


*****


正直、
この5人の発言や振る舞い、
そして、その音楽の内容と、
雰囲気を見ると、
決して、42歳には見えない。
正直、20代前半か、良くても後半くらいにしか見えない。
(肌はしっかりと、40代の肌をしているけれど。)


なので、正直、
変な感じに陥る。
見た目と、中身が、合っていない、という状態。


そして、それから23年が経った今、
2012年。

彼らは、64歳になった。

*****

思うに、エアロスミスというのは、
この10年くらいで、やっと、
精神年齢と、彼らのスタイルが、
世間が、「かっこいい」と認知出来る基準に
合って来たのではないかな、と思う。


つまり、彼らはそれまでは、
余りにもハチャメチャすぎて、
世間自体が、ちょっと腫れ物を触る様な感じで、
「一部のロック好き」しか、
聴こうとしなかった、ということ。
(現に、彼らの、特にスティーブンタイラーの昔のファッションセンスは、
酷いものがある。カッコいいんだけど、一人だけブッとんでいる。
それが、10年くらい前から、一般的に見られる格好をするようになってきた。)



エアロスミスが、世間の一般的な人にも認知される様になったのは、
アルマゲドンの主題歌に彼らの曲が使われたのが大きいと思うけれど、
それまで彼らは、あまり、
「世間にウケよう」としてこなかったんだろうな、と思う。

そして、やっと50歳過ぎ辺りで、
世間にも、「あいつら、カッコいいな」と認められつつ、
しかし、もう年齢は、50過ぎ、という。


それから約10年。
既に65歳手前になった彼ら。

エネルギーは溢れんばかりなのに、
体が、確実に衰えて行くという、
そのジレンマが、
何か、非常に悲しくなる。

*****

だからこそ、このアルバム(Pump)を聴くと、
42歳前後で作ったものにも関わらず、
非常に「若い」というか、
凄いパワーだな、と改めて、驚かされる。


*****

ちなみに、俺が最初に聴き出した彼らのアルバムは、
"Nine Lives"だった。
中学2年の頃。

その後、この"Pump"を聴き出した。
中学3年の時。

なので、このアルバムを聴くと、
中3の頃、14歳くらいの頃を思い出す。
(自分の通った高校へ、試験を受けに行ったときの帰りの電車の中の様子を良く思い出す。)

*****



とりとめの無い文章になったけど、
とにかく、非常に良く出来たアルバムで、
そのアルバムを作った彼らの様子が、
良く見えるドキュメンタリー。



最後に。

スティーブンタイラーを見ていて思うけど、
人間というのは、本当に、
年齢と中身は、関係ないんだな、と思う。

彼の場合は、いわゆる50歳手前までは、
本当に落ち着きの無い、「悪ガキ」だったんだと思う。

それが、50歳辺りを境に、
そこに、年齢から来るマチュアーさが入った。
それが今では、もの凄い人間的魅力になっている。



彼は、本当に子供のようというか、
自分の本能の感じるままに、
それを出して、生きて来たんだと思う。

でも同時に、それをするということは、
相当スニーキーにならないと出来ないし、
かつ、周りの人間の動向も読んだ上で(つまり、周りをよく観察した上で)、
自分を出していかなきゃいけないから(そうしないと、むしろ、自分をどんな場所でも出すことは出来ないはず)、
同時に、
凄く頭がいい人なんだと思う。


よって、彼の発言は、
常にストレートというか、
本質を突きまくっている。

その点は、論理的に話すトムハミルトンと、
対局にいる様で、似ている。

どちらも、本質を突いた話し方をするが、
トムハミルトンは、一歩置いて、
自分自身をも客観的において、
少し含み笑いをしながら、あくまでも知的に話すのに対して、

スティーブンタイラーは、
周りを一度良く見回した後に、
自分を客観的に見つつも、
その中で、一番首を突っ込んで、
一番注意を引きながら、
敢えて、言葉遣いが悪く、
本能的に、話をする、という感じである。



補足として、
そんな中で、ジョーペリーはいつも、
自分の世界と周りの人間との間に、
境界線を張っている。
特に、年齢を重ねれば重ねる程、
彼は、自分の殻に閉じこもって行く傾向がある。

で、ブラッドウィットフォードは、
ちょっと焦点の合わない視線で、
職人的な発言をしている、という感じ。

そういうそれぞれの人間模様も面白い。

******


ちなみに、上に書いた、
「ジョーイ、スティーブン、ペリー」の人間関係だけど、
ジョーペリーは、スティーブンタイラーには鋭い口を聞くが、
同時に、彼は、スティーブンタイラーに対して、
大きなコンプレックスを持っている。

ジョーペリーは、誰よりもプライドが高く、
常に一番になりたいが、
彼のカリスマでは、一番にはなれない。
彼はあくまでも「月」「ダークサイド」の魅力であり、
その点、スティーブンタイラーは、
「太陽」「ライトサイド」なので、
二人が並ぶと、
どうしても太陽側にフォーカスが当たってしまう。


この、「スティーブンとジョー」の二人にも、
面白い人間関係が存在する。

ジョーペリー一人でソロ活動をしても、
やはり、世間からは認知されない。

よって、彼は、
「エアロスミスの中のギタリスト」
として、一番脚光を浴びる。

でも、そこにはいつも、
隣に、自分の正反対のスティーブンタイラーがいる。



また、スティーブンタイラーもやはり、
一人でソロをしても、
太陽だけでは、ただ眩しいだけで、
どうも、その良さが出ない。

そこで、エアロスミスに戻り、
隣に、ダークな光を放つジョーペリーが存在するだけで、
彼自身も、輝く事ができる、


なので、結局は、
この5人が揃って、ベストの状態になる、と言える。

(このビデオの中で、スティーブンが最初の方に、
ジョーを指してこう話す。

「俺は、彼が子供時代にどんな経験をしたのか知らないけれど、
とにかく、ヤツは、俺とは正反対なんだ。
俺が持っていない者を、彼は持っているし、
俺が彼の様にしようとしても、それは無理だ。

だから、俺は彼が必要なんだ。」



*****


以上、エアロスミスは、
音楽も良いし、
ステージパフォーマンスも最高だけれど、
それがどうしてかというと、
各5人が、それぞれ非常に個性が強く、
かつ、みんな、相手に気を遣わずに、
自分を出しまくっているからなのです。



彼らのドキュメンタリーやインタビューを見ると、
彼らの近年の映像の中では、
必ずこういう事を言っている。

「俺たちはやっと、
『何に本当に注意を向けなければいけないか』
に気づいたんだよ。
今までは、他のヤツの事ばかり気にして、
お互いにムカつき合っていたところをな。

今、こうしてまだバンドがあるのも、
やっと、『お互いの存在を、認める』
っていうことを、学んだからだと思う」と。

*****


一つのバンドで、
特に、彼らの様な凄まじいバンドで、
何十年も一緒にやって行くというのは、
もの凄いパワーを使うものなんだろうなと、
彼らを尊敬してしまう。


2012/6/15 23:00






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