February 07, 2012 13:52

「サブプライム後の新世界経済~10年先を読む「経済予測力」の磨き方」by 中原 圭介

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ファイナンシャルプランナー兼エコノミストの中原氏の本です。

内容は、
1、サブプライムが何故起こったかと、その後の世界経済の流れ
2、なぜエコノミストの予測が当たらないのか
3、経済予測力の磨き方
4、資産運用の際の金融機関の磨き方

などが書かれています。

*****

これは彼のモットーの様ですが、
心理学、哲学、歴史学を学び、
幅広く物ごとを見られる視野を付ける事で、
経済や金融に対しても、的確な予想ができるようになると説いています。

上に挙げた、「なぜエコノミストの予測が当たらないのか」ですが、
要するに、世の中にいるエコノミストは、
実際には使えない経済学ばかりに詳しく、
その分野の専門性ばかりが高過ぎて、
他の視点から物ごとを見られていない、と。

よって、心理学、哲学、歴史学のような学問を学び、
それらの「モノゴトの見方」を適用する事で、
本当にモノゴトを見られる様になりますよ、
ということを説いています。

*****

また、サブプライムローンをきっかけに破綻した世界経済ですが、
「アメリカ人が世界中のモノを買い求める様になり、
それが振興国と世界経済の成長と原動力であった」ということ、
及び、
「今の経済不況を治すには、
再度、アメリカが世界の需要の中心となれるように、
各国がアメリカの国債のスポンサーとなって、断固として買い支えることで、
アメリカ中心の世界的なお金の循環システムを復活させられる」と言っています。


各国でバラバラに経済政策を打つと、保護貿易が加速し、
世界経済が縮小する。
それよりも各国で協調して、
世界経済のエンジンである「アメリカ」を支える方が、
得策である、と。

*****

しかし、上の経済対策には、
各国の国民感情が賛成しないでしょうと、筆者自身も書いています。

「どうして、俺たちの税金でアメリカを救わなきゃいけないんだ?」と。

しかしながら、歴史的に見ると、
世界はアメリカの恩恵を受けて来たと。
ヨーロッパはアメリカから援助を受けて第二次世界大戦に復興し、
日本や中国、アジア諸国も、アメリカがモノを惜しみなく買ってくれたおかげで、
高度成長を達成できた、と。

だからこそ、
ザブプライム問題を引き起こしたアメリカを非難するだけではなく、
「アメリカ経済を助けてやる=世界経済を助ける」ということを理解した上で、
世界中の人々が、「今回だけは助けてやるか」と寛容の心を持って、
合理的な選択ができないか、と言っています。



彼は、この意見に対して、重大な欠点があると説明しています。
アメリカが永遠に財政赤字と貿易赤字を増やし続けるのは、不可能である、と。
それでも、アメリカへの資金環流のシステムにより、
現状ではこの矛先は先へと回避できると説きます。

*****

また、上の意見とは別に、
アメリカだけに頼らずに、
世界各国で消費を伸ばして、経済を回復させるべきだという意見に関して、
彼はこう述べます。

結論として、この考えは、世界経済を悪い方向へもって行く可能性をはらんでいると。

それは以下の通り。


経済が極度に悪化する
  ↓
国家は国内企業を保護する為に、輸入障壁を設ける動きを強める
  ↓
輸入関税の引き上げに寄る輸入制限や、政府による国内企業への補助金投入が起こる
  ↓
国内企業を助ける一方で、輸出入の低迷化を招く
  ↓
国際貿易の縮小に拍車がかかる
  ↓
世界経済の縮小が進み、更に経済が悪化する
  ↓
人々が生活の不安から右傾化して、大きな戦争に向かう下地が出来上がって行く


*****

また、世界が大きく誤った方行に行かない様に、
各国の首脳、財務省、経財相、中央銀行総裁などは、
定期的にネットで会議を開くべきであると説きます。

開催国に招待国を招く従来のやり方では、
お金も手間も時間もかかるし、
結果、話し合いたい内容に結論が出る前に、
時間切れになってしまう、と。

それよりも、
ネット環境が発達した今、
それを十二分に生かし、
何度も頻繁に話し合う必要がある、と。


これには僕も賛成です。
よく、アニメや映画で、世界各国の首脳同士が
ホログラムなどで話し合うシーンがありますが、
あんな風に出来たら、いいなと思います。
(もしかして一部では既にそうやっているのかもしれませんが)

*****

この本が書かれたのは2009年の3月であり、
今から3年前になります。

今は、日本国内の企業を見ると、
マーケットが拡大している東アジアに焦点を絞って、
需要を拡大させ、ビジネス展開をして行く展望の企業が多いと思いますが、
果たして、上に挙げた様な、
「アメリカを再びマーケットの中心へ」という動きが起こることはあるのでしょうか。

そして、アメリカが再度、
世界経済の中心に戻る日は来るのでしょうか。

*****

2012/2/7 14:56



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