November 10, 2011 23:13

「村上朝日堂はいかにして鍛えられたか」by 村上春樹

51RBJDT4NKL


村上さんのエッセイです。

このエッセイを読むと、
村上さんが、ただのおっさんなんだということがよくわかります。
というか、
本当は凄い人なのかもしれないけれど、
このエッセイを読んでいると、
「ははは、ただの面白い一般市民だな。俺と同じだな」
と笑いながら読んでいて、
ふと、「あれ?この人が、海辺のカフカとかを書いたんだっけ?」
と、ふと不思議な感覚に陥ってしまいます。

それくらい、ルースで、
気を抜いていて、とても読みやすいエッセイです。

*****

元々は、村上さんのことは、
彼女から教えてもらいました。
彼女が、村上さんの「そうだ村上さんに聞いてみよう」
シリーズなど、彼のエッセイが好きで、
付き合い出した頃、彼のそういった本を、
読ませてもらいました。

で、そこから、「ノルウェイの森」を読んで、
俺は一気に村上さんにハマってしまったわけですが、
なので、俺はどちからというと、
彼の小説ばかりにハマって、
彼のエッセイは、殆ど読んだ事がない、という状態でした。

彼女はむしろ、高校の頃から、
村上さんのエッセイが大好きだったみたいです。

******

この本は、色んなテーマが書いてあるのですが、
まあ、彼が日常生活で考えたり、
思ったりした様な、どうでもいいことが、
「サザエさん」的な、「ああ、それ、あるある」みたいな、
人の日常を覗いて、大してすごくなくて、
読んでる自分もほっとする、
そんな感覚をもたらしてくれる、
緊張しているときに読むと、ふと肩の力が抜ける、
そんなリラックス剤みたいな本です。



俺が好きなところは、
彼が空中浮遊の夢をよく見る、というくだりとか、
(麻原彰晃が、空中浮遊をする、ということをニュースで見たとき、
信じるとか信じないとかよりも、
「だから何なんだ?」と思った。「そんなことは、僕にでもできる」と最初に感じた。というくだりが面白い)

以前住んでた鵠沼海岸の付近で、
筑紫哲也にそっくりのホームレスがいて、
それを、知り合いの編集者に話したら、
次週の週刊誌に、「こらあ、テツヤ!」という見出しで大きく載ってしまった、
とか、

全身裸で、家事をする主婦の事を取り上げたら、
全国から、「そんなことも知らなかったの?」的なレターを沢山いただいた、とか、

全国のラブホテルの名前特集とか、
(彼と、水丸さんと、丁稚のイガラシで話すところなんかは、ただのエロ親父の集まりですね)

まあそんな風に、読んでいて、「うっしっし」と、
思わず笑ってしまう内容ばかりです。

まだ全部読んでないけれど、
さっき読んだ中で面白かったのは、
彼が、横浜にある、皮膚科と性病科が一緒になったという病院にいったとき、
そこで大きな声で、
「ムラカミさん、ムラカミ・ハルキさあああああああああああん!!!」と大きな声で呼ばれた、とか、
その看護婦の様を表す書き方とか、
そういうのが、とてつもなく面白い。

以前ローマで買ったランチア・デルタ1600GTというイタリア車が、
どんな車よりも、表情が良く出る車だったということで、
アクセルを踏み込むと、「ういいいいいいいいいんん!!!」となって、
「おおおおおおお・・・・」とまるでレースカーを走らせている様な感じになるけれど、
メーターをよく見ると、80キロしか出てなくて、
「アホか」と思う、そのくだりとか、
最高ですね。

******

ぜひ、オススメです。
個人的には、オリジナルハードカバーの方が、
文字が大きくて読みやすいし、
本そのものに愛着がわくので、好きです。

2011/11/10 23:12




追記:
昨日書き忘れたけど、
村上さんの作品は、海外では非常に有名だけれど、
こういう、どうでもいいエッセイとか、
彼の、その文脈の面白さ的なところは、
日本語以外に訳してしまうと、
その微妙な面白さが、きっと伝わらなくなってしまうんだと思う。

だからこそ、村上さんが書いたそのままの日本語のニュアンスで、
彼のこういう文章を読めることは、
日本人としての一つの幸せでありますね。



ということが書きたかった。



トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
Archives
記事検索