October 10, 2010 01:34

「言葉」の、職人。

9784163731001

村上春樹の
「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」
を読んでいる。

すごく面白い。
1ページ1ページを読むのが、愛おしい。

彼の本は、
読めば読むほど、
すごく大事なものに思えて来て、
ちょっと読んでは、
本を眺め返して、
カバーを見たりして、
全体を触って、
幸せな気分になる。

彼の書く文章は、
非常になめらかで、
イメージとしては、
一つの大きな、磨かれた球体を思い起こされる。

それはなぜだろう、と
ずっと思っていたが、
今回彼のこのインタビュー集を読んで、
「なるほど」と分かった。

彼は、一つの作品を仕上げるのに、
何度も何度も推敲して、
無駄な部分を削ぎ落とし、
最終的に、文章の「芸術」を作り上げる。

それは、アーティストで言えば、
レニー・クラヴィッツが、
一つの曲を作るのに、
全ての音を自ら演奏して、歌い上げ、
それを何度も何度もミキシングして、
本当に完成が行くまで、何百時間も
スタジオにこもるのに似ているし、

ミケランジェロが、
彫刻を何度も何度も掘り、
最後は何度も磨き、
一つの大きな石から、
作品を彫り上げる事に、似ている。



言わば、村上さんは、
「言葉」の職人。

俺は、職人ものが好き。
ものが好き。
「モノ」の形を見て、
それがいかに、芸術的に作られているかを、
眺めるのが、好き。

それと一緒で、
村上さんの書く言葉は、
何度も磨かれて、
無駄を無くして、
これ以上無いと言うくらいまでに、
磨かれた言葉の集積。

だから、読んでいて、楽しい。
いや、読んでいて、「気持ちいい」。

だから彼の作品は、
その一文が、どうのというわけではなく、
彼の一つの作品を通して、
大きな一つの作品として見た時に、
その最初から最後までの、文章の流れが、
非常に気持ちいい。

だから、読みたくなる。

******


彼の書くものの中には、
毎回「暗闇」の部分が描かれる。
それに関しても、このインタビュー集では語っているので、
非常に深いが、
今はそれには触れないでおく。

******


文章、言葉というのは、
非常に不思議なものだと思う。

誰もが、生きている中で、
同じ言葉を使う。

しかし、その言葉の並べ方や、
言い回し、
文章の流れ、
全体の雰囲気、

それらの違いだけで、
一個一個の使っている単語は一緒にも関わらず、
一人一人の発する言葉は、
全然違う響きを持たらす。


例えば、今日の帰り、
うちの会社の社内報を読んでいたが、
会長、社長、取締役、
その他のスタッフの言葉、
全ての文章が、雰囲気が違い、
全ての文章が、「その人」を表す。


言葉の使い方に関しては、
その人がいかに、「書くこと」に慣れていて、
いかに、自分が思っているとおりのことを、
表せるか、
という、
技術的な問題もあるだろうが、

しかし、
その人の使う言葉、使う文章、
言葉遣い、
そういったものは全て、
その人自身を、やはり、表すと思う。


自信がないけれども、
勢いをつけようとする人の言葉には、
それが現れるし、

すごくマメで、
よく考える人の文章には、
それが現れるし、

繊細さを持つ人には、
その繊細さが現れるし、

ガサツで、一件荒々しく感じるけれど、
その奥には、深い知識と、優しさを兼ね備える人には、
それが現れるし、

人の心を傷つけたり、
誤解を招くような言い方をしてしまう人には、
やはり、その人が結局は、
そこまで考えられていないんだということが、
現れるし、

全て、
その人が発する言葉、書く文章、
言い回し、
その、単語と単語の集まりの「ことば」には、
「その人自身」が、現れる。



******

そんな中で、村上さんの書く言葉、
発する言葉、
それには、
彼の、素晴らしいまでの、「職人芸」が、現れる。

だから、彼の文章は、
読んでいて、気持ちいい。
美しい。
「磨かれた球体」というイメージが、
作品全体を通して、持たらされる。



******

村上春樹。
「言葉」の、職人。


2010/10/10 1:33am

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