July 09, 2009 22:01

「ゴーギャン展」

我々

東京国立近代美術館にて、7月3日から開催されている
「ゴーギャン展」に行って来た。

今まで、ゴーギャンはあまり詳しくなかった。
特に好きなわけじゃないし、余り興味もなかった。
でも、今回、ゴーギャンの作品が世界中から
一度に集まるというのもあり、
ちょっと前から楽しみにしていたので、
遂に行って来ました。


平日の2時ごろに入ったので、人もそこまで多くなく、
まあまあ快適に見られました。

いつもはどの展覧会も、終了間際に行っていたので、
「見る」どころじゃなく、人の多さに辟易していましたが、
今日はそんなことはなくて良かったです。

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肝心なゴーギャンの絵自体は、とても良かったです。

彼の描く絵は、まったりしていて、
色はとても鮮やかです。
色は原色なわけではないのですが、
色をうまく取り入れていて、見ていて落ち着く
色使いをしています。

また、この展覧会は、
ゴーギャンが初めて筆を握った頃の作品から、
一度彼がタヒチに行き、そこで描いた頃の作品郡、
そして、もう一度生まれ故郷のパリに戻ってきて、
そのパリで自分の絵が全く受け入れられない事にショックを受け、
もう二度とパリの地は踏まないと決め、
またタヒチに向かい、最後はマルキーズ諸島で死を迎えるまで
描き続けたまでの人生を、
3つの段階に分けて展示してありました。

ですので、作品を見ていて、
彼の画家としてのスキルが上がって行く様子も見えたし、
彼の情熱がどこへ向かって行ったのかを見ることもでき、
中々親切で興味深い展示の仕方となっていました。

彼が、二度目に訪れたタヒチの地で、
最愛の娘が無くなった悲しみと、
自分が悩まされていた病気の辛さに耐えながら、
遺書がわりに描いたという大作、

「我々はどこから来たのか 
 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」

その作品は、一つだけ大きな空間を利用して、
その作品をじっくり味わえるように飾ってありました。

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正直、最初に中に入って、
まずはグルッと一周周り、
全ての絵を品定めしたときは、
あまり「すごいな」とは思いませんでしたが、
また入り口に戻り、
一つ一つの作品を、解説と供にジックリ見ていくと、
彼が「何」を描こうとしていたのか。
それがはっきりと見えてきて、
とても幸せな、濃い時間を過ごせました。

タヒチ















彼は、目の前に広がる、
しかし、写真や言葉では言い表せない、
その「空気」「感情」「愛しさ」「哀愁」
そういうものを、一枚の絵の中に収めようとしたわけです。

彼の描く絵は、技術的にすごく上手いわけでもないし、
言ってみれば、まるで小学生が描く絵のような
そんな雰囲気をかもし出します。

しかし、それは、その人にしか描けない、
かもし出せない、
そんな特別な「雰囲気」を含んでいるのです。

ゴーギャンの絵が、なぜ今も人に愛されるのか。
なぜ、生前はほとんど世の中に受け入れられなかったのに、
今では、世界中から賞賛されているのか。

それが、何となく感じ取れたような気がしました。

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また、彼の描く絵は、本当に雰囲気があって、
例えば「アリスカンの並木路、アルル」
という作品では、本当に目の前の紅葉の葉っぱが
こっちに飛んでくるような、
そんな感覚に陥りました。

アルル














また、彼がタヒチにいた頃に作った版画の作品郡。

タヒチの人々の生活や文化を浮き彫りにした
その作品群をじっくりと見ていると、
本来、人間というのは、
日の出と供に起き、自然の中で、
自然と共存し、
そしてまた、自然に対する畏怖の念も常に持ち合わせ、
夜は、悪霊が取り巻く闇に怯え、
そんな「生活」を送っていたんだな、と。

そんな、「生活」が、本来の「人間」というものであり、
そんな生活を、人々は、ほんの数百年前まで送っていたし、
それこそが、人間というものの、本質じゃないのかな、と、
そんなことを感じました。

タヒチ2
















*******

現代社会、
夜遅くまで仕事をし、
物質主義に走り、
物質的には恵まれているものの、
人々が感じる、「幸せ」と感じる感覚。
それは、果たして伸びているのだろうか。

数日前、CNNのニュースで、
世界で人々がどれだけ「幸せ度」を感じているかの
ランキングが発表されていました。

それを見ると、一位はコロンビア。
上位10位には、グアテマラやエルサルバドルなど、
中米の国がほとんど入り、
先進国、物質社会の象徴である
日本やアメリカは、丁度半分くらいの
75位あたりでした。

最下位は南アフリカのジンバブエで、
それらの地域では、貧困や紛争が起こっていて、
だからこそ人々が、幸せ度を感じないのは納得できるけど、
果たして、物質的にも十分恵まれている
日本やアメリカが、上位に名を連ねず、
140いくつある世界中の国々の中で、
ちょうど真ん中あたりというのは、
人々は、物質的、経済的に恵まれているからといって、
それが必ずしも「幸せ」には結びつかないということ。

それを見事に証明しているようでした。

*******

僕が2年半前にグアテマラとエルサルバドルを訪れたとき。

エルサルバドルのミゲールの家に泊まり、
彼の家族の生活を見ながら、
エルサルバドルの人たちの生活とはどの様なものかを
実体験しました。

人々は夜の9時には寝て、
朝の4時か5時に起きる。
夜は家族楽しく食事をして、
町を歩いていても、人々は他の人々に優しい。

そんな、シンプルで、昔ながらの生活。

だけど、すごく満たされていた気がしました。

*********

ゴーギャンも、今から100年前とはいえ、
フランスなどの先進国で人生を過ごし
(彼は株のトレーダーとして成功していた)、
その後タヒチに移って、
人々は元来どんなものであるのか、
それを感じたのではないか。

そして、そこに自分の情熱を感じ、
全てのパワーをそこに投じて、
自らの作品を残して行ったのではないか。

そんなことを感じました。

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とにかく、ゴーギャンという人の生涯が
少しではあるが垣間見れる展覧会となっています。

夏休みになると混むと思うので、
興味のある人は、今のうちにぜひどうぞ。

2009.07.09



PS.
ゴーギャン展の会場から東京駅まで出ている
無料シャトルバスに帰りに乗ったとき。

その運転手さんが、マイクで色々と
教えてくれた。
皇居(江戸城)は、実は徳川家康が作ったものではないとか、
今取り壊し中のパレスホテルのローストビーフは
超絶品であったとか、
平将門の祭ってある場所があそこにありますとか、
何かツアーガイドのように
一つ一つ丁寧に、しかし心地良く教えてくれた。

そんなところには全く期待していなかったけど、
そのバスの運転手さんがいい人だったといいうだけで、
何か凄く幸せになった。

また、地元に帰ってきて、
自分の靴2足の踵が磨り減ってしまったので、
それを近くのスーパーの地下にある靴屋さんに持っていって
直してもらった。

そしたら、その靴屋さんが凄くいい人で、
靴もしっかり直してもらったし、色々教えてくれた。

そんな風に、いい人との出会いがあるだけで、
「ああ、今日ここに来てよかったな」
そう思える。

今まで色々なところに行って来たけど、
やっぱりそこの土地に行って良かったなと
思えるのは、その土地での人の出会いだし、
結局は、人との繋がりなんだな、と。

それを強く感じた一日でした。







こぼれ話
世界一「幸せ」な国はコスタリカ、日本は75位 英調査


(CNN) 英国のシンクタンク、新経済財団(NEF)が4日、世界143カ国・地域の「幸福度」について調査した結果を発表、世界一幸せな国に中米コスタリカが選ばれた。上位10カ国中には、ラテンアメリカ諸国が9カ国ランクインした。日本は75位だった。


NEFは世界各地の人々が感じる人生への満足度に加えて、環境に対する負荷の度合いや国への期待度などをそれぞれ数値に換算した幸福度指数(HPI)を算出。その結果、コスタリカが76.1ポイントと最高だった。

コスタリカは中米のニカラグアとパナマにはさまれた国。熱帯雨林や美しい海岸で知られ、エコツーリズムが盛んで、世界各国から観光客が訪れる。大統領は1987年にノーベル平和賞を受賞したアリアス・サンチェス氏。

コスタリカに続いてHPIが高かったのはドミニカ共和国で71.8ポイント。以下、3位ジャマイカ(70.1)、4位グアテマラ(68.4)、5位ベトナム(66.5)、6位コロンビア(66.1)、7位キューバ(65.7)、8位エルサルバドル(61.5)、9位ブラジル(61.0)、10位ホンジュラス(61.0)と、ラテンアメリカ諸国が上位を占めた。

一方、先進国では英国が74位、日本が75位、米国が114位と低迷した。これは、大量消費社会で、環境への負荷が高いことを反映したためだと見られる。

反対に幸福度数が最も低かったのは、長期にわたる独裁政権下にあり経済が崩壊状態のアフリカ南部ジンバブエで、16.6ポイントだった。次いでタンザニア(17.8)、ボツワナ(20.9)、ナミビア(21.1)、ブルンジ(21.8)など、アフリカ諸国が名を連ねた。

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