November 08, 2008 23:46

"inevitably incomplete"


自分がまだディアンザカレッジにいた頃。
確か、2004年の秋学期。
English 1Aの教授で、マーティネスってやつがいた。

彼は、生徒に大人気で、彼のクラスはいつもフルだった。
なぜか?

彼の授業は、絶対に「A」が取れるとの評判だったから。


俺もどんな先生なのか知らず、
どんなクラス内容なのか知らず、
とりあえず興味本位で取ってみた。


クラスの初日。彼は、黒いマントをひるがえして現れた。
何だこのオッサンは。
それが最初の印象。

髭をもっさり生やして、
見た目はジョージ・ハリスンのアーミッシュスタイルみたいな感じ。
全身黒尽くめ。
背は高く、やけに頬がこけてて、
変なカリスマ性がある。

オンラインでクラスに登録ができず、何とかアドしてもらおうと
生徒が部屋中に、それ以上に教室の外まで
あふれ出していた。

そんな大勢の生徒たちの前で、奴は言った。

「私のクラスを受講したら、
 キミたちには必ずAを与えよう」

どんな教師やねん。

しかし、彼は付け加えた。

「このクラスは大学レベルの基礎英語クラスだが、
 私が君たちに与えたことは何でもせねばならない。
 それに従う者のみが、このクラスに残ることができ、
 その者にはAを与える」


俺が前もって聞いていた他の生徒のうわさによると、

「彼はクラス内でダンスを躍らせて、
 それでグレイドを付けるらしいわよ」

実際にはどんなことをするのかと思いきや、
本当に奴は踊りだした。

「私の踊りに従うんだ」

奴が、クラスの前で踊る変な踊りを、
俺たちは無言でしたがって、一緒に踊った。

何人かの生徒がクスクス笑うと、
奴は、
「Guys! This is not funny. This is serious」
(君たち!笑うんじゃない。これは真面目なことなんだ)


実際に、それだけの大人数がクラスに入れるわけもないので、
クラスには、週に3回授業がある内、
生徒たちは10人ほどのグループごとに分けられ、
1日グループ何組、という形で出席した。



また、別の機会には、
「明日の授業には、自分たちのグループだけのスタイルで登場しろ」
だの、
「自分たちのグループで創作ダンスを考え、
 それを録画し、クラスに持って来い」
だの、
これって英語のクラス?というか、
英語の勉強は一切しなかった。


結局、クラス当日に集まった100人近くの生徒は、
全ての生徒が、クラスに入れることに。
しかし、実際には、30人ほどの枠。
本来なら、あと70人もアドできるはずがない。

しかし彼はそれをやろうとしたので、
学校のアドミニストレーション側が怒った。

「それはルールに反する」と。

しかし彼は学校に対して逆ギレした。

「私のクラスに入りたいという生徒がいる限り、
 その生徒たち全員を受講させるのは、
 私の持つ権限だ」と。

そして、彼は学校のアドミニストレーションを相手に
裁判を起こした。

その裁判のときに、彼が相手側に殴られたとか何とかで、
もめていた時期もあった。

決着がどうなったかはよく覚えてないけど、
結局、そんなわけで、クラスには100人ほどの生徒がいた。

最初のクラスルームでは到底入りきれないので、
一時期は「青空教室」と銘打って、
学校のガーデンで授業をした。

その後は、何とか大講堂を借りて、そこで授業をした。

*****

奴の授業の中では、
「これは前の学期のときに、あるグループが作った、
 私の一番のお気に入りのビデオだ」と。

見ると、マーティネス主演の、
ミュージッククリップみたくなってる。

CGとかを使って、奴の持ってる傘が七色に変化したりしてる。

どう見ても、やつがカッコつけたいだけだった。

そのときに流れていた、プリンスだかの曲は、
それ以来、大嫌いになった。


*****

授業の中では、本当に、英語という英語は、
一切教わらなかった。
本当は、誰もが卒業するのに必修である
文法やリーディング力、エッセイを書く力をつける、
一番大事な授業なのに。

そんなオッサンの要求にも、生徒たちは理不尽だと思いながらも、
「奴が言ったことを守りさえすれば、俺たちはAを取れるんだから」
と、文句一つ言わず、従った。
完全に、割り切っていた。

「こんなアホらしいダンス誰もやりたくねーけど、
 この授業の間だけは、何も考えず、ただ奴の課題をこなすんだ」と。


*****

そんな変な教師が、ディアンザにいた。
そして、そいつがある日、クラスの中で言っていたセリフが、
このブログの題名にある、
"inevitably incomplete".

直訳すると、「必然的に不完全」。


奴は、そのセリフを口にして、
「この世の全てのものは、"inevitably incomplete"だ」。

そして、俺たちは、奴の言うそのセリフを、
何度も繰り返した。

「イネヴィダブリィ、インコンプリート、
 イネヴィダブリィ、インコンプリート、
 イネヴィダブリィ、インコンプリート」


そのときの奴の発音が、今でも耳に残っている。

 「イネヴィダブリィ、インコンプリート」


******

さっき、映画を観ていたら、
"Inevitably"っていう単語がセリフに出てきて、
「ああ、そういえばあんな変な教師もいたんだなあ」と、
ふと思い出した。


何だか、ほんの3,4年前のことなのに、
はるか昔の、しかも全然違う世界のことのように感じる。


11.08.08


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コメント一覧

3. Posted by 短髪ラマ   November 27, 2008 21:43
おじいちゃん、お久しぶり。
あのキッチンで話した日々が懐かしいねえ。
おじいちゃんには本当にお世話になったわ。

そう、そんな先生がいたのよ。
あれは「先生」っつうより、まさに教祖だったね。
いやあ、変な先生だった。笑
2. Posted by tetsu   November 13, 2008 21:45
こんばんわ そしてはじめまして

 さっそく、質問ですが「安田 靫彦」さんという画家さんがいましたよね。で、その人の絵って何派なのか知りたいのですが。分からなければそれでも結構です。
 できれば早めにお答えを出してくれれば幸いです。ご返答、よろしくお願いいたします。
1. Posted by 短髪おじいちゃん   November 12, 2008 23:09
なんだそりゃw
思わず吹いたw

そんな先生がいたんだ。
教祖にでもなりたいんだろうな

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