October 30, 2007 00:42

「ノルウェイの森」

村上春樹の「ノルウェイの森」を読み終わった。
この小説、読み始めて、すっすっと、あっという間に読んでしまった。

考えたら、こんなに早く、しかも楽しんで読み終わった「小説」は、始めてかもしれない。
実際、「楽しんで」というのは、ワクワクとか、そういう「楽しさ」じゃなくて、
人間の心理の奥底に潜んでいる何かを、突っつかれたような、
ちょっと、恐いもの見たさのような、
そんな、「面白さ、興味深さ」だった。


***

ちょっと前に読み終わったばかりだから、まだちょっと頭の整理がついていないが、
村上春樹は、人が持ちえる考えや、空気、感覚、
そんな、「目に見えない、人しか”感じる”ことのできない、”何か”」
を、文章に表すのがとても上手だと思う。

一見、ただ、淡々と文章が続いていくように見える。
しかし、その文章は、風景や物事、人物の描写意外に、
その登場人物たちの、繊細な感情までもが、
事細かに、ありありと綴られている。

それを読んでいる内に、まるで、
自分が、その小説の主人公の人生を歩んでいるような感覚に陥ってしまう。


***

誰もが、簡単に、その様子を思い描ける文章。

そこに行ったことはなくとも、その情景を、
まるで目の前で見ているかのように、思い描くことのできる、文章。


そんな文章を書ける人こそが、本当に文章のうまい人なのかもしれない。


***


村上春樹のこの作品のテーマは、色々あると思うが、
その中でも、メインであろう、「生」と「死」。

主人公は、自分の中の一部が、完全に「死んでしまう」ことを、
自分の心の中で一番大事にしていた人が死んでしまうことによって、
体験する。

そして、それから、初めて、
主人公は、「生」を知る。


「死」を知って、「生」を知る。


それまで、まるで無感覚であるかのように、
淡々と日々を送っていた、自分からは、
抜け出して。


***

人の「痛み」も、同じかもしれない。

自分が、その「痛み」を知ってこそ、
誰か他人の痛みに共感することができ、
その人を思いやれる、優しさが出る。

その痛みを、自ら「体感」するまでは、
いくら頭で、その「痛み」を分かろうとしようが、
本当の意味では、分からない。



自分は、中学の頃に、その「痛み」を知った。
その痛みを知ったからこそ、他人の痛みに敏感になり、
「人の気持ちが分かる人になりたい」

そう思い、他人に優しくなることができるようになった。


***

この小説を読んでいる間、今までの人生での、色々なことを思い出した。
ある意味、それは、自分の心の中の、もう治ってほとんど無くなりかけていたと思っていた傷の、跡を、確かめていたようなものかもしれない。

その傷は、もう、ないのかもしれない。
いや、まだ少しはあった。
しかし、その傷は、もうほとんど癒えてきた。
ただ、自分で、何故その傷がついたのか、
どれだけ深くついたのか、
どういうプロセスをおって、その傷を、自分は自分なりに癒してきたのか、
そして、その傷を受けたことによって、
自分の思春期時代の考え、性格、
そういったものが、形成され、変わっていったのか。


そこを、今までとは全くちがう角度から、
見直すことができた、
そんな感じだった。


***


人によって、この小説を読んで感じることは、様々だろうが、
自分は、こんなことを、この小説と供に、した。

自分の思春期時代の心を、見なおすことを。


10・29・07

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