October 01, 2006 14:39

「町のアーティスト」


土曜の午後。ロングビーチの町は、平日のそれよりも多くの人でごった返している。道路を走る車の数も多い。

そんな中、好きなスーパーの一つに行く。
Trader Joe’s.(トレイダー・ジョーズ)
基本的にオーガニックの品物を置いているスーパーマーケットだ。

このスーパー、なぜ好きかというと、
いつも店員の活気がいいから。
みんな、楽しんで働いている。それが見て取れる。
そんな店は、行く方も楽しい。
なぜなら、その店に行くと、いいエネルギーをもらえると分かっているから。
レジの店員も、品物を並べる店員も、花を売る店員も、
みんな、笑顔でテキパキと、爽快に働いている。
気持ちがいい。

そんな中、最近気になっていたのが、
店の壁に掛かっている黒板に、綺麗に描かれている商品の広告。
チョークを使ったであろうその色で、
鮮やかに、そして見やすく、その商品の絵と、値段、
そして、そのお薦めの理由が楽しく、イラストを用いて描かれている。
毎回来る度に、「すげえなあ」と関心していたが、
あまりにも良く描かれているので、どこかから移して来たのかとか、
もしくは、チョークで描いたように見える、ただのイラストじゃないかとか、
色々疑っていた。

今回、レジの女の子に聞いてみた。
あの絵は誰かが描いているのか、と。
その子は、後ろのレジで同じように商品を扱っている男性の背中を指して、
「これらの絵は彼が全部描いたのよ!彼、アーティストなのよ!」と。

店の中の絵、二つ以外は、全て彼が描いたというので、
見回してみたら、なんと店の至る所に、色とりどりの絵があった。
いつも来る店なのに、全然見えてないところがあったことに気付いた。
「あれはチョークで描いたの?」と女の子に聞くと、
「チョークとパステルを使うのよ」と。
後姿の彼に、その子が声をかけたので、
「絵、めちゃくちゃうまいね!いつも関心してるよ!」と言うと、
「そうやって褒められるのはいつ聞いても嬉しいね!」と、満面の笑みの彼。

店員の活気のある態度だけじゃなく、
そうやって、至る所に散りばめられた、小さな小細工。
そういう工夫が、一つの店を、他の店とは全く違う物に仕上げる。
アメリカ全土に、チェーン点のスーパーマーケットは山ほどあるが、
このスーパーは、チェーン店とはいえ、店員のこうした工夫で、
「ここだけ」のオリジナルの店となる。

アートの才能を持っていても、それを直接商売に結びつけられないからと、
アートの道をあきらめる事はない。
彼のように、別の道で働きながら、そうやって、自分の才能を生かすこともできるのだ。
そんなことに気付かされた、土曜の午後。

9・30・06


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