September 21, 2006 13:45

アメリカの教育よ!?

Sandy Family

サーフィンからの帰り道、車の中でラジオを聴いていたら、今の時代の教育について語っていた。今の学校の現状、その親の声、そしてアナウンサーの意見など。
それを聞きながら、3週間前の週末にマウントシャスタに行ってきた際に、サンディと話したことを思い出した。

サンディは、自分がアメリカ生活一年目を過ごした学校で、俺の英語のチューターをやってくれた人。最初は学校でチューターの時間に、生徒と先生として会うだけだったが、次第に親しくなり、彼女に休みの日は家に呼ばれるようになり、家族を通しての付き合いとまでなった。
彼女には、4人の子供がいる。上から、今年18歳、15歳、13歳、そして10歳。
俺がその学校にいた頃、つまり4年前は、子供たちも大分小さかった。
彼女と家族ぐるみで付き合うことになったせいもあり、彼女の子供たちとも随分仲良くなった。子供たちはもちろん学校に通っているため、下は保育園から、上は高校まで、全てのアメリカの学校システムを覗くこととなった。
実際に子供たちの小学校に行って、授業を一緒に見学したことも何回かある。
彼女と親しくなり、また彼女の子供たちと仲良くなったことは、俺にとって、アメリカの学校教育を垣間見るいい機会ともなったのだ。


今回サンディと会って、彼女と教育について話をした。
彼女は将来、先生、もしくは学校でのカウンセラーになりたいと思っているので、教育についての話題もよく出る。
今回彼女から聞いた、現在のアメリカの小学校、そして中学校の教育システムは、悲惨なものだった・・・



彼女によると、
6,7年前から、ある一部の政治家のせいで、アメリカの学校での教育システムは、日本のそれを真似るようになってきたということだった。
政治家は、それぞれの学年の“スタンダード=基準”を作り、それに追いつかない生徒は、置いてけぼりにされる。下のレベルの生徒に基準を合わせることはない。
4,5,6年生分の内容に付いていけなかった子は、7年生(日本でいう中学1年生)を、それらの部分が抜けたまま迎える。そんな状態で、その後の教育内容についていける訳が無い。

その学年ごとの、“基準”を作るというシステム。まさに日本の教育システムと同じではないか。俺が知っているアメリカの制度は、どちらかというと、その子に合った教え方をして、その子の才能を最大限に引き出すというものだった。
例えば、飛び級制度。頭が良くて、他の子よりも勉強ができる子は、ドンドン先の内容を勉強させてもらえる。
逆に、他の子よりも学ぶスピードが遅い子は、その子に合ったやり方で、先生から教えてもらえる。みんな、人によって、学ぶ方法、そして学ぶスピードは違うのである。
そんな制度だと思っていたのに、まるで日本と同じように変わってきているとは。。。
なぜそんな風に変わってきてしまったのか聞いてみた。

すると彼女は言う。
「何人かのバカな政治家により、彼らは教育について全く知らないにも関わらず、変な基準を勝手に作ってしまったから、そして彼らがその基準に合わせて決まりを作ってしまったからだ」と。
それでは、なぜその政治家たちは、日本の教育システムを真似たのか?
その理由は、”Because Japanese products have much better quality”(なぜなら、日本の製品の方が、品質がいいから)と。

え?それ本当なの?
その理由を聞いて、拍子抜けしてしまったが、どうやらそれも理由の一部らしい。
これが定かかどうかは分からない。本当の理由も、今は分からない。
しかし、それが理由だとしたら、その政治家たちは、最大のバカである。

“日本の製品の品質が一番いい”ーーーこれは、世界中の誰もが承知の事実である。
しかしこれは、日本人の偉大なる先輩たちの発明のおかげ、そして、戦後の、その発展を支えた先輩方の、勤勉な働きぶりのおかげである。
そして、ここまで日本社会を発展させたもの。
それは、学校で、“いいロボット”となる様に教えられた、我々の懸命な働きぶりの結果でもある。
自分で考えることよりも、いかに与えられたものを素早く正確に暗記し、それをテストで正確に書き出すか。
与えられた規律に文句なく従い、それを真面目にこなす。
それが出来れば出来るほど、「キミはいい生徒だ」「キミは優秀だ」と先生から持てはやされる。
そして、その“基準”に当てはまらない子供たちは、“落ちこぼれ”と見なされる。
ひどい言葉だ。“落ちこぼれ”なんて。人によって、持って生まれた才能、そしてその才能が開花するスピードやタイミングは、全く違うのだ。
それを、日本の教育が決めた基準にそって計り、それに合わない子は、落ちこぼれのレッテルを貼られる。

この日本の教育は、言う事を素直に聞く、“暗記マシーン”さえ作り出すが、
自分の頭で考えて、答えを出すという、“自分で考える力を持った子”は作り出さない。

俺は、サンディの話を聞いていて、いずれアメリカ人の子供たちも、同じように自分で考えられない暗記マシーンになちゃうんじゃないかと思い出して、聞いてみた。
すると、彼女が言うじゃないか。”Kids are not taught to think by themselves now.”(今の子供たちは、自分の頭で考えるように教えられていない)と。
それを聞いて、ショックだった。戦後の教育が、余りにも偏ったものであることに、日本の誰もが気付き始めているのに(まだ、一部の人たちは、小さい頃から“良い”幼稚園、小学校、中学校、高校、そして大学に入って、有名一流企業や政治の道に入れば、立派で“幸せな”人生が送れると信じ込んで、自分の子供を、小さい頃から、塾に通わせる親もいるだろうが)、アメリカはなんとその道をたどろうとしているじゃないか。
ショックだった。どうして、そんな風になってしまって来たのか。
何か、大事なものを見失っているんじゃないか、と。

教育とは、その子の才能を最大限まで開花させるもの。
その子が持って生まれた才能を、引き出し、そしてそれを使って、社会、そしてこの地球に貢献できる人間に育つことができるように、子どもたちに自信を付けさせるものだと思う。
ただの暗記マシーンにすることが、教育の意義ではない。
もし今のアメリカが、“日本の製品の良さ”という、とんでもない目の付け方をして、それでアメリカの教育システムを変えようとしているんだったら、これはもう本当に、“ちょっと待ちなさい”という感じである。


サンディの子供が以前通っていた学校の、先生の話。
 以前は、その学年による“基準”はなかったから、先生たちは、子供たちに、その子に合った方法、そしてスピードで教えていたものの、今となっては、その州が定めた基準に合わない子供は、足手まといと取られる様になってきてしまった。
そして何より恐ろしいのは、その先生たちのボーナスが、自分の受け持ちのクラスの子供たちの成績の良し悪しで、決まってしまうと言うことだった。
 つまり、自分のクラスの生徒の成績が良い先生は、学校からエクストラのボーナスを貰う。逆に、成績の悪い子がいるクラスの先生は、ボーナスはなし。
だから、先生は、お互いに競い合い、自分のクラスの子供の成績を、無理にでも上げようとする。
そんな時、“出来の悪い”子がいると、その子は足手まといと見なされ、先生に嫌われる。何て話だ。
実際に、サンディの子どもは、学校の成績が良くなかったため、先生に嫌われて、嫌がらせまで受けたらしい。それでサンディは耐えられなくなり、子どもを別の学校に移した。
現在サンディの子の内、一人は、自宅教育(Home Schooling)を受けている。周りの学校に、どこにもその子の学年用の良い先生がいないとの理由だった。

また、サンディの一番下の子の、女の子の話。
この子は今、10歳だから、小学4年生くらい。以前は学校では、数学はそんなに早く教えなかったものの、今では、Too much(多すぎ)という位の量の宿題が毎日毎日出されるそうだ。
理由は、学校側が、政府の定めた基準に追いつくために、子どもたちに課題をドンドン与えているため。
まるで日本のそれやなと思った。別に日本の数学の教育システムが悪いとは言っていない。逆に、日本の数学システムはとてもしっかりしていて、良いと思う。   
 アメリカに来ると、日本人なら、いかに日本で数学ができなかったとしても、こっちでは、良くできる方と見なされる。九九だって全員ができるし(こっちでは九九は教えない)、代数の計算くらいまでなら、誰だってできる。だからこそ、日本の留学生は、数学の時間、皆から賞賛されることが多い。暗算だって慣れているからだ。
しかしこっちの数学の時間では、小学校から電卓を使わせる。暗算なんてさせない。スーパーのレジで、暗算でおつりを計算すると、「何でそんなに早いの?本当にそれ合ってるの?何で分かるの?」と怪しまれるくらいだ。彼らは、暗算ができないのだ。

ちょっと話はずれるが、この前アジアの旅の途中に、インド帰りの女の子に聞いた話。
インドでは、どんなに田舎の小さな店に行こうと、そこの店員は全員、暗算で素早くお釣りを計算するそうだ。間違いは、絶対にないらしい。その額がいくら大きくても、複雑でも、絶対に間違えないとか。
恐るべし、数学の王者、インド人。ゼロを発見しただけの事はあるぜ。

さて、話戻りまして、
そうやって、日本の数学の教育システムを真似ていく事もいいが、それが、この国の子供たちの学習スピードに合っていなかったら、問題だという話。
現に、サンディ曰く、自分の子どもは、多すぎる宿題に、悩まされているという話。十分に遊ぶ時間も取れないまま、毎日宿題に終われ、そして終わったら、寝る時間。

本当にそんなに多いのかよ、もしかしたら、大袈裟なんじゃないの、と思い、(だってアメリカ人はとにかく大袈裟だからね)実際にHannah(その女の子)の宿題を見てみた。
・・・なんだこりゃ?確かに、小学四年生にしては、多すぎる量。
「ママ、これ分からない!終わらないよ!」
その子は文句を言っていた。

この例は、ちょっと極端かもしれない。
しかも、これは、カリフォルニアの、しかもSiskiyou Countyという地域の、ある一部の学校の話。アメリカ全土に渡ったら、それはそれで州によって決まりも法律も違うし、教育制度も変わるだろうから、全てがこうだとは思わないが、それでも、サンディが言うように、子どもが、今現在、確実に変わっていく教育システムでうなされているのだったら、それは問題だ。
そして、そのシステムがそんな風に変えていかれた理由が、日本の教育システムを真似るという理由だったら。
そして、その理由は、日本のように、品質の良い製品を作るためだったのなら。
そして、その行く末は、素直に言われた事を、文句一つ言わずに行う、立派な暗記マシーンを作ることだという事に、アメリカ政府側が気付いていなかったら・・・
そうしたら、それは本当に恐ろしい。

そうじゃない事を、願う。
というか、今から、この国の変わり行く教育システムについて、ちょっと調べてみようと思う。
誰か詳しい事を知ってる人がいたら、ぜひ教えて下さい。

俊輔

9・20・06


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コメント一覧

2. Posted by Shun   September 22, 2006 15:37
まゆみちゃん、
なるほど、確かに俺は偏った見方でしか日本の教育を見てないしね・・・実際にアメリカの教育を受けたわけでもないから、何とも比べる事はできないよね。実際にこっちの教育を受けたまゆみちゃんにも、色々と教えてほしいです。またゆっくり話しましょう。
1. Posted by まゆみ   September 22, 2006 05:47
うん、日本の教育には私は憧れるって言うか母親になったら自分の子を日本で教育したいって思っている時たまにありますね。アメリカの教育はたまにやり方が好きじゃないところがあったりするから私は教師になったら日本の教育のしかたとアメリカの教育のしかたをコンバインしたいと思ってます。はっきり言ってアメリカの教育の中でイジョウな所がある。。。これってあり?って時が多くなってきた。でも良い所もあるよーまあ、ここで説明したら長くなりそうなのでここでおしまいにしておきます!何か訳の分らないコメントですみません!

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