May 05, 2006 19:37

「チャリでアメリカ横断!?」

21ad4d6d.JPGnatsuki's bike #1






帰ってきました、ロングビーチ!!

そう、先週の土曜から、日本から親父がアメリカ初の観光に来ていました。
彼と一緒に、グランドキャニオンへ行ってきましたよ。
土曜に出て、ヴェガスを通り、
月曜をグランドキャニオンに費やし、
そして火曜日の夜に帰ってきました。
親父も、時差ぼけ等もある中、
長時間の運転に付き合ってくれて、
グランドキャニオンも見れて、良かったようです。
折角の初アメリカだからね。
人生で最初の。
楽しんでくれたらいいな、と思います。

そう、そこで、その旅の途中、
すごいヤツに出会ってしまったのです!!!

そいつは、お題の通り。

チャリでアメリカ横断!!!!!



彼は、俺が日曜の時点で、ヴェガスを通り、
グランドキャニオンの途中までの道のり、
ちょうどルート66を通っているときに初めて目撃した。

その道のり。
フツウはみんな、その下のI−40を使って、一気にウィリアムズまで一直線で行く。
そっちの方が、道が楽だし、早いからね。
でも、折角ここまで来たんだからってんで、
親父と俺は、そこのルート66を通って、ウィリアムズまで行く事にしたのでした。
それも、中々着かない、曲がり道。
そして、坂道。
車でも大変だった。
ジープをレンタルして行った俺らだったが、
それでも運転に疲れてきた。


そんな時、前を、一人、
自転車に乗って走っている奴がいる。
え?競輪?
何でこんなところを?
しかも一人で?
こいつ、何やってるんだ?
どこまで行くんだ?
確かこの前の町は、結構前だったはず。
次の町までも、結構あるぞ?
この人、どこへ行くんだろう?

そんな事を一瞬の間で考え、
彼の横を、車で追い抜かして行った。

追い抜く瞬間、横目に彼を見ると、
その競輪用の自転車に体を託して、
必死に坂を駆け上る姿の男は、
アメリカ人。それも、30歳台に見えた。
きっと、仕事を休んで、
自分の人生の新たな定義づけのためにやっているんだろう。
こんな人生を選ぶ人もいるんだな。
きっと、今のこの俺とは、同じ人生でも、
全然ちがう視点で、「人生」、「この世での命」を見て、
使っているんだな。
そう思った。



そして、彼のことも忘れ、
しばらく走り、俺も疲れたので、
そこにあった、小さな休憩所にとまった。
小さなレストランがある。
そこのトイレを借りて、親父は横で寝ているので、
俺も、車の中で、少し休憩することにした。

シートを倒し、いざ横になろうとすると、
車の前を、さっきのチャリに乗ったやつが、通っていく。

あ!? さっきの人だ!!

しかも、アジア人?
あれ?日本人っぽい??
っていうか、こんなのやるヤツは、アジア人なら、日本人しかいないな!

そう、彼を見た瞬間に思って、
これは逃しちゃいけないと、
車から急いで降りて、彼の方に走っていった。

彼の後ろから、声をかける。
自分: “Excuse me? Are you biking to somewhere?”
彼:  “Yeah!”
その彼の答え方を見た俺は、とっさに彼が日本人だと気づいた。

自分: “Where are you from?”
彼: “Japan!”
自分: 「日本人の方ですか?僕もそうなんですよ!!」
彼:  「ああ!本当ですか!?」

そうして、彼との会話は始まった。

少し小柄な体。
でも、体はがっちりしている。
手袋を外したその手は、日にさらされている所は真っ黒だが、
その下の部分は、俺と同じくらいの肌の色。
なのに、その肌が、真っ白に見えた。
それくらい、肌が真っ黒に焼けていた。
左腕の肘の部分なんかは、もう、火傷になっている。
赤くなっている。
「それ、痛そうですね・・・」
「そう、痛くてしょうがないんですよ」

そう言う彼は、まるで仏の様な笑顔をしている。
その男。
名前は、高山 夏樹(たかやま なつき)。
名前は人を表すというが、
まさにその通りだと思った。
高い山にそびえる、夏の樹木。
そんな、大きな心を持ったやつだというのは、
話して、たった少しで、
すぐに分かった。
というか、彼のその、自転車でこいでいる姿を見れば、
誰でも一目瞭然だけどね。 ^−^
「どこから来られたんですか?」
「LAからです」
「いつそこを出たんですか?」
「4月の12日に日本からLAXに着き、
そこからここまで着ました。」

その時は、4月の30日。ということは、もう18日も経っている?

「え?じゃあ、もう18日間もこいでるんですか?」
「そうですね、
ヴェガスには2日観光で泊まりましたけどね。」

そう言って話す彼の顔は、まさに、
晴天の太陽。
本当にいい笑顔をしていた。
こいつ、今の人生を、
この瞬間を、めっちゃ精一杯生きてる。
そう感じた。

「ちなみにどこまで行くんですか?」
「ええまあ、NYまで」

え???ニューヨーク????
ウソでしょ???
でも、彼は本気らしい。

「どれくらいかけていく予定なんですか?」
「大体3ヶ月くらいを見てますけどね」

ここからニューヨーク。
ありえん。そう思った。

その彼、見ると自転車には、車で走る際の、
その州用の、地図が取り付けてある。
いやいや、これは車用でしょ。 ^−^
これを見ながら、ひたすら走る彼。

なんでこれをやりだしたのかを聞くと、
彼は、日本にいた時、大学は、サイクリング部に入っていたらしい。
それで、まずは日本縦断を制覇したとか。
その後、次にやるのは、アメリカ横断しかねえと思い立ち、
今回、観光ビザを、最大分の6ヶ月まで伸ばしてもらって、
パナソニック製の特性マイチャリを日本から持ち寄せ、
LAXから、ただひたすら、
ここまで来たらしい。

そのチャリ。見ると、前にも、後ろにも、
両サイドに、重そうな荷物が、くくり付けられている。
「これ、全部荷物ですか?」
「そうですね、テントや寝袋、食料や水などですね」
「食料はどうしてるんですか?」
「必ず一日分の缶詰は持ち合わせて、走るようにしてます」

夜は、もちろん、毎回モーテルに泊まれるわけじゃない。
もちろん、お金もないだろう。
それに、泊まる以前に、次の町が、どこかも分からない。
あるのは、車用の、大雑把な地図のみ。
これを頼りに、
取り付けたMDプレイヤー、
それだけで、ただひたすら走る。

朝は、8時に走り出し、
夜の7時まで走るそうだ。
そして、日が落ちてから、
テントをはり、寝袋で寝る。
シャワーが浴びたくても、浴びられない。
あったかい食べ物が食べたくても、食べられない。
あったかい布団で寝られない。
家族にも、友達にも会えない。
しかも、日本語も通じない。
その前に、車さえも、夜はあまり通らない。
雨だって降るだろう。
雷もなるだろう。
昼間は、恐ろしいまでに暑くなり、
夜は、ひどいほどに冷え込む。

そんな中で、彼は、ただひたすら、
次の町を目指す。
そして最終目的地は。
ニューヨーク。
次の町じゃない。
NY。
車でもきついのに、それをチャリで行く??

なんてヤツだ。


聞いてみた。
「たまに、やる気が出ないときとか、
嫌になる時はないんですか?」
「いや、もう毎日ですよ。」
彼は、その素晴らしい笑顔で答える。

ブッダだ、こいつ。
仏の境地だ。

「そんな時は、どうやって気合を入れるんですか?」
「もうそんな時はふて寝しますね。
でも意外と、起きると、
もう直ってるんですよ。
それでまた走り出します」

こいつ、かなわねえ。
仏陀だ。


こいつはすごいヤツに出会ったと、
車に走り、親父を呼びに行く。
「親父!すごい人に出会ったよ!!」

親父も着て、また、質問攻め。
親父が聞く。
「失礼ですが、今おいくつですか?」
「今年の8月で23歳です」
え!?俺と同い年じゃん!!

「マジっすか!? 俺と同い年ですね!!」
「本当ですか?」

それで、お互いの簡単なプロフィール紹介をした。
彼は、日本の横浜出身。
もう内定は決まっているが、一年学校を休学して、
このアメリカ大陸横断の旅に費やす事に決めたらしい。
もう、働き出したら、こんなことをやる時間は一生取れないと。
こいつ、賢い。
先を見ている。
先を見て、自分が人生にとって、
何が本当に大事なのか。
何を本当に成し遂げたいのか。
何を、己の命を使って、証明したいのか。

それを見据え、
誰も知らない土地に、一人で来た。
なめし皮でできた座席がついた、
パナソニック製の自転車と共に。


俺は何か彼にしてあげたい、
何か、助けになれないかと考え、
その時親父が日本から持ってきてくれていた、
カントリーマアムをあげた。
「これで良かったら、ガツガツ持って行っちゃってください!!
あと、水もいりますか?
ペットボトルで沢山ありますよ!」

彼いわく、
水が一番、問題どころ。
沢山持って生きたいが、持ちすぎると、重くなる。
逆に、少なすぎると、すぐに無くなる。
その境を見極め、持ってく水の量を決める。

ペットボトルを3本だけ彼は受け取ってくれた。

「この後はどうするんですか?」
「とりあえずここで2時間くらい休憩して、そしてまた出ます。」
その時は、午後3時過ぎ。
また今日も、最後に何時間か走るのか。

その重そうなチャリ。
親父が聞いた。
「それ、ちょっと持たせてもらってもいい?」
「どうぞどうぞ」
それを持った親父。
「うわ!なんだこの重さは!!」

その親父に連れられ、俺も彼に頼み、
チャリを触らせてもらう。
その自転車。
持ってびびった。
その、重いこと重いこと。
重すぎて、普通に支えているだけで、
すでに力がいる。
この自転車で、真っ直ぐ走るだけでも大変なのに、
これで、あの急な坂を登っていた!?

驚いた。
脱帽。
感服。

彼いわく、
「その自転車、多分40〜50キロはありますよ。
原チャリより普通に重いですからね」
そのチャリをこぎ、
彼はNYへ行こうとしている。


最後に、写真を撮らせてもらい、
そして、もし助けが必要なときは、と、
俺の連絡先を渡した。
一応アメリカ中に友達がいるから、
もし助けが必要だったら、連絡してくれ、と。
彼は、嬉しそうに、名刺を受け取ってくれた。


彼にさよならをし、
また、車で走り出した。
走りながら、思った。
俺、車で、全然着かないなんて思って、
疲れたなんて言ってたけど、
あの夏樹くんに比べたら、何でもないじゃん。
恵まれすぎじゃん。
俺、めっちゃ甘い環境にいねえ?


Sky in R-66







そして、運転しながら、気づいた。
この距離を、ただひたすら、
あの重さのチャリで行くのは、
到底不可能だ、と。
俺にはね。
でも、彼はやるだろう。
これを書いてる、今も、彼は、
その道のどこかにいるに違いない。
毎日、少しずつだけど、
コツコツ進んで、
目的地に近づいているに違いない。

その車の道中、
俺はずっと、
「すげえな、すげえな、
すげえやつに会ったな、
あいつすげえな」
そればっかり繰り返していた。


その夜、モーテルに泊まり、
シャワーを浴びる前に、彼のことを思い出した。
彼は、今頃、テントの中で、寝る準備をしているんだろうか。
誰もいない、砂漠の真ん中で。
寒い中、
温かいものも飲めず、
温かいものも食べられず、
誰とも話せない中で。

強いやつだ。
めちゃくちゃタフなやつだ。

もし彼が、本当にNYまで自転車で着いたなら、
相当の大物になるだろう。
あの、仏陀並の笑顔で。


今日も彼は走っているに違いない。
事故と、怪我だけはしない様に願い、
健闘を祈りたい。

そして、今の俺は、
自分がどんなに辛い状況に陥りようが、
彼の精神的+肉体的辛さに比べたら、
こんなの何でもない。
そう思えるようになった。



高山夏樹。

この男。みなさん、覚えていてください。
彼は必ずや、大物になります。


5.4.06


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コメント一覧

4. Posted by kenta-ok   May 28, 2006 17:42
自転車で走破というのはすごいですね。特に西部〜中部というのは単調な上、気候も厳しいですから。車でも体が痛くなるのに。
3. Posted by Chie   May 06, 2006 06:28
meccha sugoine-.
kakkoii~
Otokomae!

Takayamasan ga buji ni NY ni tsukimasu you ni inotte imasu.
2. Posted by 古賀敏裕   May 06, 2006 03:19
やあ、しゅんちゃん。
すごい人って沢山いるよね。
それでこそ、人生は面白いってもんだ。
1. Posted by 麻里子   May 05, 2006 20:40
凄い!
そんな凄い人で、同い年で。
精神的にタフだね!
まだまだ世の中には、自分の上を行く人が、
沢山いる。
それを肝に銘じておかなきゃ、甘んじた瞬間、堕ちるな、と、感じました。

車でアメリカ一週は、甘すぎたかな?
って、急に思っちゃった。

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